2009年7月30日木曜日

マニフェスト論争:どちらが「よりマシか」で決めるしかない




自民党の選挙公約の概要が明らかになったことで、各政党の政策が出そろった。社会不安解消に向けた景気・雇用対策、年金問題、少子高齢化に向けた教育、子育て、政治行政改革、農業政策など各党の政策論争が加熱している。

 マニフェスト選挙だから、しっかりマニフェストを読もうと思い政権要旨を眺めるが、「自分が何を求めているのか」、政権選択のポイントが分からなくなってくる。お金がないので子供が高校へ行くのを諦めたという母子家庭、共稼ぎしたいが保育施設の不足で働けないなどの話を聞くと、子育て支援はやらなければならないと思う。孫が保育園に行っているので、そこの事情はよく分かる。

 私のような年配者(高齢者)にとっては重点も違ってくる。財源確保のために配偶者控除が廃止されると大きな増税になる。高齢者医療制度、介護問題も切実な問題だ。それぞれの立場で重点を絞っていくと、どの政党に今後4年を託せるか判断が付きにくくなる。

 更にここに来て、党首の発言が問題になっている。

 鳩山さんは、今回発表した政策集は正式なマニフェストではないと言い出した。全国知事会が要求する「地域主権」を目指すかどうかで国と地方の協議機関を入れる必要が出てきたための発言らしい。公示日に配る正式なマニフェストには追加するらしい。

 一方、麻生さんも高齢化社会に向かって、「高齢者をどう使うか」「高齢者は働くしか能力はない」と発言したそうだ。麻生さんは「舌禍」で人気を落とす。「外に出ないで、何も喋るな」が自民党議員の本音かも知れない。「高齢化社会にあって、高齢者はまだ働ける。若者には負けない十分な技能も持っている。働きたい高齢者の希望が叶える社会を構築しなければならない」と言えば、政策も出てこようが、「高齢者は働くしか能力がない」では、何も出てこない。お粗末な総理であることに間違いはない。

 新聞は皆、同じ事を書くので、読めば読むほど分かることが少なくなる。何か目新しい事はないかと、他の出版物を見たりテレビのチャンネルを切り替えて情報番組を見るが、欲しい情報はない。

 そんな中で、6党の参議院議員が出席し各党のマニフェストを論じたテレビ番組があった(7/3 テレビ朝日 スーパーモーニング 各党マニフェスト対決)。

 キャスターの「一番の売りは何か」との質問に、自民党は政権運営の責任、国家運営の基本を示すと言う。民主党は補助金などムダを廃止し、予算の総組み替え、政治家改革、政治資金規正改革をするという。共産党は自公政権さようなら。社民党は生活再建、構造改革で暮らしはぼろぼろ、雇用・社会保障で立て直す。国民新党は郵政民営化見直しが1丁目1番地だ。

 やはり問題は、その財源だ。民主党の岡田さんが言ったように「財源なくして政策なし」だ。

 自公は、民主党政策に財源が不明確で、民主党では財政再建は出来ないと主張し、民主党政権になっても借金はゼロには出来ないと言う。借金は既に846兆円にもなり、人気取りのためのバラマキは出来ないのだ。しかし、「ここ3年間でも140兆円の赤字を積み上げたのは自公政権じゃないか」と反論されている自民党は、2011年のプライマリー・バランス改善に向け、骨太2009,ムダの削減もやり工程表も出すという。

 一方、民主党の政策では2013年度の所要額、16.8兆円を挙げているが、この財源をどうするのか激論になったのは当然だ。埋蔵金の他に、民主党は、特別会計で毎年4~5兆円の不用金(余剰金)がフローで出ており、それを当てるという。私も国家財政を検討した人の出版物で毎年10兆円ぐらいの余剰金があることを知った。特別会計は国会の審議も経ない予算であり、国家公務員の言いなりの予算になっているのが現状だ。ここはしっかりチェックし、ムダを排除しなければならない。

 共産党も、今回のバラマキ予算で出た15兆円の財源はどうなっているのか。自民党も真剣に考えていないと追求した。今は、暮らしの大変な人を支えなければならないと主張していたが、同感である。米国のノーベル物理学賞受賞のクルーグマン教授も、その著書「危機突破の経済学」で緊急の政策は、大企業や富裕層向けの減税ではなく生活弱者の救済を提案をしている。

 コメンテーターが少子高齢化社会に向けた、少子化対策、高齢化対策が必要だという提案する。

 少子化対策では、保育所などの施設を増やし、待機児童をなくすという。高齢化対策では介護の実体はむごいことになっている。介護職員は20%の離職率で給料が低い。民主党は+4万円を考えているという。8000億円かかると言うが、税金のムダを排し、優先順位を付けて課題を実施すべきである。

 別のコメンテーターは、自民党は自己批判が無さ過ぎるという。今回提示された政策は、既にやっていなければならない政策であり、どうして今出てくるのかと首をかしげる。

2005年に公約された120施策の実施状況は、公約達成55件、取り組み中65件、未達成0件という。各党は、未達成0件はおかしいという。自民党が独自に評価したモノだが、民主党も評価して、30日に発表するという。
詳細にどうなっているのか知りたい。こういうときに役立つのがPDCAサイクルの採用である。政策目標達成に向け、出てきた課題をどう解決し、目標実現に向けてどう努力しているか。それぞれの政策に対する課題の達成状況はどうなっているか。これさえやっていれば、誰でも評価できる。政策決定後の、国民の要望に対してどう対応しているかも分かるのだ。

民主党にも聞きたいことがある。どのような日本の経済社会を構築しようとしているのかだ。自民党は経済成長率2%、200万人の雇用創出、年収100万円増などを掲げている。民主党政権になるとどんな社会になるのか。

 ところで、各党が政権を執った場合は、誰が総理候補になるのか。

 自民党の麻生さんは、「政党の責任力」を問う。民主党は鳩山政権として政策を推進し、4年間で実績が出なければ、当然に責任をとり退くという。一方、自民党は7~10年の長期ビジョンを示したが、今後4年間での工程は不明である。それにもましてもっと大事なことは、誰が政権を担うのか。個人的にも資質に問題があり、党内をまとめることも出来なかった責任は自分にあると反省、謝罪したのは麻生さんだが、今後4年間も麻生さんで行くのか。
 
 今、流れは「民主党過半数確保可能か」だ。麻生さんが選挙に勝って再度政権を担うことなどメデイアは考えていないので追求しないのだろうが、麻生さんが野党党首である事にも、一抹の不安を感じる。

 自分自身の立場に立って、「どの政党の政策か」を考えていくと、「この政党だ」というのは見つからない。自分にとっては不利な政策もあるだろうが、全体を見て「どの政党がよりマシか」で判断するしかない。

民主党の意気込みは買える。

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