2009年9月11日金曜日

こんな安売り競争していて、本当によいのか




家内のスーパーへの買物に時々付き合う。選ぶ品物は特売品や値引き品で、閉店間近がねらい目だ。パンなどの売れ残りは、いつも同じ物ばかりだ。買いだめをして冷凍庫に入れておく。卵や砂糖が1人一つのサービス品である時は、強引に連れて行かれる。
 良い物が易く手に入ったときは、家内も満足そうだ。
 市内にスーパーが5店あったが、値引き競争や手狭による改築が出来ず、3店が撤退した。値引きするが品物の質が落ち、お客が離れていったようだ。

 デパートの売り上げも連続して落ちているようだ。消費者のひもは堅い。婦人服売り場を見るが、いつもセールをやっている。家内が「これどう?」というので、店員さんに「もう少し待てば、セールに出ますよね」というと、「これは出ません」という。家内に「気に入ったら買ったら」と言うと、やっと買う決心が出来たらしい。家に帰って「貴方がいなかったら買えなかった」と御礼を言われる。

 首都圏のデパートでは、古い靴や下着、バッグなどを引き取り1000円の商品券がもらえる商法が話題を呼んでいた。何と新しい購買を誘い出す効果があったそうだ。しかしこれはそんなに新しい商法ではない。私が若い頃、スーツの安売り店が古い不用になったスーツを持ってくれば、「半額になる」とか、「値引きする」とか言って商売していた。安売り競争の元祖だ。

 この「安売りが銀座を変えようとしている」というので、銀座へ行ってみた。

 銀座と言えば、高級ブランドのイメージが強い。昔は「東京銀座○○」と言えば、高級感があった。いまでも銀座2丁目はルイビトン、ブルガリ、テイファニー、カルチェなど高級ブランド店が林立しているが、5丁目にはユニクロが出店している。

 小売店では一人勝ちの企業だ。2020年には連結売り上げ5兆円を目指している。その銀座店に入ってみた。他の高級ブランド店は、お客より店員の方が多かったが、こちらはお客のほうが多い。

 商品を見ていると、店員さんが「レザージャケットは今、6000円でおつりが来ます」という。良く値札を見ると価格は5990円に設定されている。確かに6000円で10円安い。そこら辺で安値感を出しているとしたら、テレビ通販のジャパネットタカタの商法だ。まとめ買いすると3990円、これも4000円でおつりが来る。有名になったヒートテックのアンダーウェアーは1500円だ。

 興味があるのは、隣のビルを今改造していて今秋オープンする予定で、スタッフを募集中とのこと。その改造中のビルに入っていたのは、高級ブランド店だったそうだが、安売りのユニクロが隣に来たので、高級感のイメージがなくなったので撤退したらしい。

 今、全国各地で安売り競争が激化している。私達も安くなければ手を出さない傾向になってきたが、「何故安いのか」、「安物ばかり買っていたらどうなるのか」を真剣に考えなければならない。

 家具を調達しようと、ニトリの店舗に行ってみた。「更に値下げしました」のキャンペーンをやっていた。この会社の社長は「30~40%値下げしないと、消費者が納得しないだろう」とテレビで発言していたことがあるが、会社は本当に値下げをしている。値下げできる要因に、海外の優れた材料を買い集め、東南アジアの工場で製造し、日本に持ってきているそうだ。設計とか品質は本社でやっているらしい。

 ニトリの製品が売れても、材料の生産者、工場の従業員は皆海外の人で、日本人が担当するのは店舗での販売が主だ。どの位もらっているのか知らないが、ニトリの製品が売れると、潤うのは外国人だ。

 一方、中堅の家具メーカーの島忠にも行ってみた。設計コンセプトは同じであるが、価格はニトリの倍で、10万円を超す商品がそろっている。材料は国産を使用し国内で製造している。重量感もあり質も良いことは分かる。この会社の商品を買うと、高いが、日本の生産者、製造・加工業者が潤うことになる。

 経済はグローバル化しており、保護主義は良くないことは分かるが、日本の労働者が潤うようにするには、高い方の商品を買わなければならない。

 私の場合、30分ほど車で行くとイーオンの郊外型大規模ショッピングセンターがある。今、プライベート・ブランドで新商品の開発を行ない、安価な商品を提供しているという。安く出来るのは、お客の情報を取り込み、自社で商品開発をして、自社員が販売することにあるらしい。勿論エコを取り入れてカーテンの余り生地で、クッションを作って198円という安値で販売をしている例もある。

 安値競争は、消費者に強く指示され、利益は少ないが今後も続くだろう。そして競争に勝って初めて、利益が出てくる構造だろう。

 企業にあっては固定費の中で、人件費の占める割合は大きい。競争が激しくなれば、人件費を抑えなければやっていけない。

 人件費を抑えようと思うと、正社員ではない派遣社員、期間工、準社員、アルバイトなどでまかなうしかない。正社員だって減給されるだろう。そうなると収入は伸びず、家計は苦しい、GDPの約6割が個人消費と言われているが、消費は伸びない。国内経済は不況だ。安くしないと売れないから、更に人件費を削ることになる。デフレスパイラルだ。

 年収が300万円未満の人は、今50%までは行かないだろうが、それに近いのではなかろうか。格差の拡大ではなく人件費の削減が進む結果、「低所得化」といった方が当たっている。

 政治的にはどうすればいいのか。最低賃金を時給1000円にする方法も提起されている。しかしアルバイトの時給を上げることは、他の社員の給料の値上げもしなければならないだろう。今だって四苦八苦している中小企業にあっては、人件費の高騰は経営に関わる問題である。

 「お客様の生活支援キャンペーン」なる催し物に出会うことがある。大企業が、自分の利益を吐き出してのキャンペーンなのか、生産者を泣かせてのキャンペーンなのか分からない。

 適正価格で、企業も正当な利益を出し、設備投資も出来、従業員の生活が楽になり、雇用も促進し、消費も拡大する。そうするにはどうすればいいのか。ここが一番の問題なのだろう。

 社内留保などを考えると、企業は労働者をないがしろにして大儲けしているのではないかという見方があるが、適正価格で安売りに歯止めをかけなければ、国民の懐はうるおわない。

 誰がその口火を切るのか。自分の事でさえ不安があるのに、他人の事など考えて買い物など出来ないのも確かだ。

1 件のコメント:

真人 さんのコメント...

ニトリの社長が、毎日新聞で安売りに反論しました。

デフレ懸念に反論 ニトリ社長
                          毎日新聞 2009.10.8

「当社やユニクロを非難するのはおかしい」
家具・インテリア専門店のニトリの社長は、6日記者会見し、「価格引下げがデフレを誘引している」といったデフレ懸念の声を真っ向から反論した。
ニトリは消費不況が深刻化した昨年待つ以降も来店客数を伸ばしている。
最近の物価下落について、「収入が減っている以上hあ、物価も下げるべきだ」と肯定し、「企業努力で価格を引き下げ、より多くの消費者の要求に応えるのがニトリの社会貢献だ」と述べた。

今後3年で300店舗体制を目指す方針だという。