2009年10月1日木曜日

官から民への子育て 保育園、幼稚園はこれでよいのか




東京で住処にしている近くの区立幼稚園の解体工事が始まった。娘に「どうしたんだろう」と聞くと、「今、共稼ぎの親が多くなって、遅くまで子供を見てくれる保育園の方の需要が増えている。やっていけなくなったのでは」という。
 工事現場に行ってみると、旧幼稚園舎改修工事と表示されている。大田区の出張所に確かめると、大田区立の幼稚園は今年3月31日で廃園になった。この施設は小学校1~3年生の学童保育の施設に変わるという。小学校の授業が終わって、午後5~6時頃まで子供を預けることが出来るれば、親の就業を支援できることになる。

 小学校に上がった保育園児と幼稚園児を比べると、幼稚園児の方が良くできるらしい。長い時間机に座ることが出来るらしい。幼稚園に入る年齢になると、親はどうしようか迷うようだが、仕事のことを考えると、遅くまで見てくれる保育園の方選ぶことになる。

 東京都大田区のHPで、「区立幼稚園廃園のお知らせ」を見ることが出来る。区立は3月31日で閉園とある。私立へ変わるとなると費用も上がるのだろう。入園料補助金や保育料補助金の便宜が与えられるという。私立の幼稚園があるので、そちらで支障はないと言うらしい。

 今、待機児童は25,000人、東京都でも5000人を越えている(10年後の東京計画)。保育サービスの充実、定員の確保など待機児童を減らすのは各自治体の緊急課題だ。

 その一方で、多様なニーズに応え、保育サービスの充実に向けて区立保育園の民営化も進められている。区立では人件費が高く、コストもかかるので、民営化することによってコストを削減しようと言うのだ。経営形態には、区から民間へ土地/建物の貸与による民立民営(私立)と運営を委託する区立民営がある。現在大田区では、前者が9カ所、後者が4カ所になっているが、27年までに22の保育園を民営化するらしい。

 近くに、区立北嶺町保育園があった。駅からチョット離れているが、運動場も完備され、良い保育園だと思っていたが、募集では定員に達せずいつも2次募集する保育園だった。娘の通勤では一駅余分に乗らなければならないので、送り迎えに不便があり、第2志望にした保育園だが、民立民営化された。

 経営状態がどうかとか、保護者の見方はどうなのか、知るよしもない。

 一般的に言えることは、事業にかかる固定費の人件費の占める割合が高い。民営化すると、どうしても若い保育士さんを派遣で採用したりする。時給では1000円未満だろう。ベテラン保育士さんは、辞めていく。その結果、保育の質の低下は避けられない。

 サービスの充実面では、2時間以上の延長保育、定員の拡大、休日保育、一時保育などが上げられるが、保育の質もサービスのうちと考えると問題がありそうだ。

 先日の新聞報道によると、各地の自治体が公立保育園民営化を延期または凍結したという。その理由は、「保育の質が下がる」と保護者が反対したり、民営化での引受先が見つからない事にあるらしい。

 この記事の中で、専門家が「民営化は限界に達しているのではないか。社会全体で子供を育てるという観点で、保育政策を抜本から見直すべきだ」と提言している。

 「官から民へ。民でできることは民で」が一時叫ばれた。市場主義から考えると、経済を活性化させ、自由競争でサービスは良くなると訴えたかったのだろうが、肝心な保育士さんの待遇の悪化、それに伴う本来のサービスである「保育の質」も下げることになるのでは、何のための民営化か分からない。

 ホーム・ページを見ると、東京都は待機児童解消に向けいろんな政策を進めている。
しかし、これらは重要な政策であるが、その前に、今までの民営化の総括をして欲しい。経営が軌道に乗っているのか、サービスの質はどうなったのか、従業員の待遇はどうか、保護者の満足度はどうか。情報公開が必要だ。都民、国民のチェックすることはたくさんある。

 いろんな話を聞くにつけ、しっかりした検証をしての政策の推進が望ましいと思うのだが・・。

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