2010年11月3日水曜日

対中、対露戦略:APECか国益か


東シナ海での中国の漁船監視船による尖閣諸島での領海侵犯・公務執行妨害事犯、そして露大統領の北方領土国後島訪問など領土問題にからむ中国、ロシアの行為は国民の感情を逆撫でするようなモノだ。

更に、それへの菅政権の対応が弱腰外交に見えて政権支持率を大きく下落させる要因になった。

前原外務大臣は一貫して「尖閣諸島に領土問題は存在しない」と主張し、今回の露大統領の北方領土訪問に対しては駐ロ大使を一時帰国させる対抗手段に出た。

しかし、菅総理は冷静な対応を主張、APECでの首脳会談で、「遺憾の意」を表明したいと考えているというが、その首脳会談の実現も不透明らしい。

一連の中国、ロシアのごり押し外交も日本で開催され菅総理が議長で、達成評価報告をする横浜でのAPECの開催を考えると胡国家主席、メドベージェフ露大統領の出席は欠かせないし、対応にも苦慮するところだ。

APECか国益か。「自由貿易の推進」も世界経済を考えると重要な課題であるが、領土問題は死守しなければならない国益だ。尖閣は資源問題も絡んで中国は強行な姿勢を取っているが、竹島の二の舞は避けなければならない。

それにしても、アジアでの各種首脳会議が相次ぎ、その度に中国との関係が取りざたされた。

東南アジアの経済は中国なしでは成長できなくなっているが、自己中心的な経済政策を採る中国のやり方は、利益を中国に持って行かれるというチャイナ・リスクが危険視されている。

東アジア首脳会議(EAS)は東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に日本、中国、韓国など16カ国が参加し、30日にハノイで開かれた。中国の異常なまでの拡大行動を抑制しようという狙いもあるが、ASEANだけでは中国に対抗するのに限界があると考え、来年からはアメリカ、ロシアが加わるという。

当初は経済連携での枠組みだったが、中国の軍事拡張を押さえ込もうとするモノへ変質していった。

ところが、アジア太平洋経済協力会議(APEC)には、広大なアジア太平洋地域全体を自由貿易地域にするFTAAP構想を進める計画がある。これは「自由で開かれた貿易及び投資」を達成しようというモノだ。

今回のAPECでは、日本が議長になって、達成評価報告書を作成し、最終承認を求めることになっている。

今話題になっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)もアジア太平洋で貿易、投資を自由化使用という経済連携であるが、我が国では農業政策も絡めて賛否両論だ。これもFTAAPにつなげようとされている。

兎に角、地域の経済統合は急速に進められようとしている。菅総理もこういった経済の枠組みの中で、安全保障にも取り組もうとしているという見方がある。

横浜でのAPECの意義は重要であることは理解できるが、中国、ロシアの参加も不可欠だろう。だからといって、国益を害することはできない。

ひれ伏して中国国家主席、露大統領に当たるよりも、毅然として国家の品格を保つべきだ。日本の総理は「遺憾の意」を表明すればいいのだ。断固とした強い姿勢を取ることが国益を守ることになるのだ。

APEC開催が成功か、失敗かは参加国の対応次第だ。
写真:釈放でも強硬 対中国政策・・問われる政府より 2010.9.27テレビ報道より

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