2011年3月23日水曜日

原発・地震防災対策:御用学者はお役目御免、これからは広く考えを取り込め




今回の東北地方太平洋沖地震による壊滅的な津波被害、安全と言われていた原発の致命的破壊は、政府が推進する防災、原発行政に大きな衝撃を与えたのではないか。「御用学者もこれまでか」の感がする。

参院予算委員会で斑目原子力安全委員長が、福島第一原発の事故で答弁に立ち、「原発設計の想定が悪かった。原子力を推進してきた者の一人として個人的には謝罪する気持ちはある」としながらも「割り切った考えをしなければ、設計が出来ないが、割り切り方がまずかった」と原発事故対応の甘さを認めた(河北新報内外ニュース 2011.3.22電子版)。

原子力発電、地震対策など国を挙げての政策推進は、時の政治に呼応するものでなくてはならず、その組織のトップや委員は、当然政府のYESマンが選ばれる。異端者の意見など省みられない。

原子力安全委員会が、今回の地震がなかったら開催したであろう原子力安全シンポジウムのテーマは「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について・・合理的に達成可能な最高の安全水準を目指して・・」だ。論点は「合理的に達成可能な最高の安全水準」を目指すという。何のことはない「割り切った考え」なのだ。

しかし、これ程の惨事を目の当たりにすると、今までの対応の甘さが目に付き、当然のことながら「御用学者もこれまでか」と思う。今、菅政権は震災対策に学識者を取り込み内閣府にいれているが、大丈夫か。身近な者の紹介で自分たちの都合の良い意見を言うことしかできない御用学者を取り込んでもらっては困るのだ。

この地震による原発の安全性について、その安全性を争う裁判が2007年10月26日静岡地裁であった。東海地震の想定震源域にある中部電力浜岡原発の運転差し止めを住民らが訴えたのだ。

結果は、住民側敗訴に終わったが、その論争点は重要で、今回の大惨事は、住民側の主張を正当化するものになった。

「東海地震が発生したら浜岡原発は危ない」。2003年7月高名な地震学者が国際会議で「原発震災」を警告した。当然中部電力は「東海地震への耐震安全性は十分に確保されている」と中央防災会議の予測を根拠に反論したが、地震学者は「大地震のことは分っていないことが多く、モデル通りに地震が起こる可能性はない」という。口火を切ったのは以前地震予知連絡会の会長を務めた茂木さんだ。
「これまでは、都合の良い学者の話ばかり聞いてきたんじゃないか。本当に最善を尽くして安全性を検討してきたのか」と国や電力会社の姿勢を批判した(朝日新聞 2003.7.19)。

浜岡原発・運転差し止め訴訟では、国の防災会議による「想定東海地震」のモデルを上回る地震が起きるのかの見極めになった。原告側は「モデルに科学的根拠がない」と主張、中部電力側は中央防災会議の重鎮だった地震学者に「モデルは見直す必要はない。M9クラスの地震はない」と言わしめた。しかしある学者は「現状としてあるのは仕方ないが、非常に良い場所とは考えない」と常識のある証言をしたという(朝日新聞2007.10.21)。

今回の東北地方太平洋沖地震は予想を遙かに超えるM9.0の地震であり、それが引き起こす津波も数波が押し寄せ、住民の生活基盤を根こそぎ破壊した。そして福島第一原発は、安全であったはずが、世界が注目する原発震災にまでなった。

地震、原発などに関する防災は、厳しい指摘をする学識者の意見に耳を貸さなければ、とんでもないことになるコトを教えてくれている。政府は耳障りの良いことばかりを言う御用学者に注意しなければならない。
写真左:福島第一原発 懸命に続く放水作業
写真右:東海地震の想定震源域にある浜岡原発 
いずれも民放テレビより

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