2011年5月27日金曜日

徐々に廃炉するしかない原発か









福島第一原発事故は、未だ進行中で、メルトダウンした燃料が水に浸かっている間は大丈夫と言うが、圧力容器や格納容器を破損することになれば事態は最悪の結果になる。我が国は37万km2の国土面積に54基の原発が立地する世界一過密状態に加え、巨大地震の想定震源域内にあったり、付近の活断層の上に乗っかっていたり、「現存するから仕方ないが、到底適した立地とは思えない」状況なのだ。

今回の原発震災は、原発政策の見直しに拍車をかけた。G8では、菅総理は2020年までに自然エネルギーの割合を20%に持っていくという。ドイツは2022年までに脱原発、スイスは2034年までに原発を停止、米国は、次世代の原子力発電の設計、建設に日本の事故の教訓を生かすと言うし、フランスは原子力に変わるネネルギーはなく、最大級の安全のためにどうしたらいいか考えるという。イタリアはチェルノブイリ事故以降、原発を廃炉にした。

原発推進、脱原発もそれぞれお国の事情がある。

菅総理は、2020年までの早い時期に自然エネルギーの割合を20%に持っていくと宣言したが、本当に国内で良く議論された提案なのか。日本のエネルギー構成は、自然エネルギー9.8%、原子力23.9%、火力65.7%。自然エネルギーのうち風力0.4%、地熱0.3%、太陽光0.2%、水力7.3%、そのた1.6%と言う。これらをどうやって20%まで持っていくのか。

民主党政権になって、鳩山さんはCO2削減25%を宣言し、菅さんは自然エネルギーの構成比を20%にするという。海外に向かって受けの言い製作を訴えているのは良いが、実行可能なのか。今回の原発自己対策でも、菅政権の発する情報は信頼されていない。

原発推進にあたって、原子力村が団結できたのも、官学産で豊富な予算を欲しいままに出来た事だと言われる。一体いくらの予算がバラまかれたのか。

原子力予算は2009年度で4556億5600万円、ここ15年間毎年4500億円以上を維持している。文部科学省が約2525億円で1848億円が日本原子力研究開発機構の予算で、高速増殖炉サイクル開発関連、「もんじゅ」の維持管理費などで毎年相当の税金が原子力予算で使われている。
経産省関係が約1933億円で、そのうち1314億円が交付金、補助金として地元にばらまかれているらしい。

もう一方、エネルギー対策特別会計も平成21年度ベースで2兆3698億円が計上され、どんな用途に支払われるのか分らないが、エネルギー需給構造高度化対策費2008億円、電源立地対策費1698億円、電源利用対策費419億円、独立行政法人運営費交付金・出資金・整備費が2547億円、国債整理基金特別会計繰り入れ1兆4139億円が主な項目だ。

何やら怪しげな費目に多額の税金、徴収金が使われている。官僚、政治家が交付金の配分で利権を確保できる資金源なのだろう。

このほかに電源三法交付金もあり、電源立地の自治体に2004年ベースで約824億円が計上されていた。福島第一、第二原発を抱える福島県に約130億円、新潟県に約121億円、福井県に113億円、青森県に約89億円に交付されている。

電源三法交付金は、逼迫した自治体財政に息を吹き込み、贅沢な箱モノ行政を推し進めた。年数が経ち交付金が減ると、それを補うために新たな原発の建設を認めることになる。「麻薬」のようなモノなのだ。浜岡原発停止で交付金が無くなり慌てた自治体があったのは、ついこの間のことだ。

これから、「原発をどうするか」を考えるときに、こういった国の政策の是非を検討する必要がある。

更に、原発の最大の利点、自然エネルギーの最大の欠点と言われている発電コストの妥当性の問題がある。今、1kWh当たりの発電コストは、原子力5.3円、石炭火力5.7円、天然ガス火力6.2円、石油火力10.7円、水力11.9円、太陽光49円と言われている。

最終処理をどうするか、またその技術が確立されていない原発の発電コストがどうして5.3円と一番経済的なのか理解に苦しむ。政策上の小細工がされていることは分るが、コレでは原発の良さは分らない。ある研究者の試算によると10円を超えるが、それでも満足なレベルではないのだ。10円を超えるのではないかとは、相当前から指摘されていたことだ。

原発の利点は「クリーン」なことだと言うが、CO2を出さないだけで、CO2よりも危険な放射性物質を出すこと今回の事故で分った。

地球温暖化の原因にCO2排出の人為説をとるIPCCは再生可能エネルギーにより、2050年には世界エネルギー消費量の77%を賄える可能性があるという。世界は大きく自然エネルギーに舵取りをするのか。

これからエネルギー源をどう考えればいいのか。原発はどうなるのか。

原発推進派、脱原発派双方の言い分は尤もな点もあるが、自然エネルギーで大きな発電量を確保するのも大変なことに代わりはない。

私も風力発電に興味があって、山形の山寺に行った帰りに風力発電を見るために立川町に行った。NHKの有名番組「プロジェクトX」で立川町の風力発電が紹介されたのを見ていたからだ。よそから嫁いできた女性が農業をするのに強風に悩まされていた。そこに風を利用した風力発電建設が始まったのだ。

田圃の中、ハゼ道、向こうの丘の稜線に風車が見られた。私が行ったときは、晴天で風はなく風車はまわっていなかったが、初めて見るその光景には感動したものだ。その後房総をドライブして飯岡風力発電所も行った。帰りにカーラジオで風力発電の話を聞いたが、この時バード・アタックの問題が上がっていた。

その後、風力発電の環境問題として、騒音で近隣の住民が悩まされていることを知った。身近で風車が廻る光景も住民にとっては異常な光景らしい。

発電した電力を買い取る電力会社にとっては、稼働率が問題だが、自然現象だから仕方ないことだ。場所によっては送電線の敷設も必要になる。メインの発電ではなく補助的発電だ。

一時停止の浜岡原発も2~3年後に地震や津波対策で安全が確認できれば再稼働の可能性を残している。この動きは定期検査終了後の再稼働を目指す原発にも影響を与えている。自治体の認可が下りない可能性がある。新規立地は論外と思われる。

そのことを考えると原発は徐々に無くなっていくフェードアウトの運命か。

直ぐに全廃にはならないだろうが、原発の「安全神話」は崩れたのだ。原発の危険性、不完全性に積極的に取り組まなければ、国民の信用を取り戻すことは出来ない。



写真左:日本列島「原発と地震」全データマップ 週刊現代5/7,14合併号


写真右:飯岡風力発電所 2005.2.12

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