2011年12月14日水曜日

国破綻し、格付け、ファンドあり:こんな近未来社会を望むか







このまま行くと、国は破綻し格付け受け会社やファンドが残る近未来社会が見えてくるが、こんな社会を望んでいるのか。経済が政治を破壊するのか、政治が経済を破壊するのか。政治が放漫財政を許し財政危機をもたらせているが、今、財政健全化、財政規律を要求し経済(市場)が政治を揺るがせている。

ギリシャに始まった欧州危機は、イタリア、スペイン、フランス、ドイツそして日本にまで及ぼうとしている。

格付け会社の格付け見直し、格下げ判断が国債の値下がり、その利回り上昇で国が資金を調達できにくくなると同時に危機回避のための各国首脳の動き、コメントが為替を変動させ、株価は大きく値下がり、値上がりを繰り返し経済は不安定の状態が長く続いている。

ところが、国民の生活を守る政治と短期の利益を追求してやまない市場では、その政治が下す政策に短期の効果が期待できず、政治と経済(市場)の相反する動きに戸惑うばかりだ。

欧州危機回避のためドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領は精力的に動き、欧州安定メカニズム(ESM)発足の一年前倒しを決めるなど回避できるかと期待していたが、メルケル首相が融資上限の引き上げを拒否したと伝わるとユーロは急落する始末だ(2011.12.14 読売新聞)。

EUでもユーロ圏に対して判断が分かれている。イギリスは経済の主導権を放棄しなければならないので参加を拒否したとイギリスの首相が力説していた。財政規律で各国にそれぞれ思惑があるようだ。

でも市場の判断は、大方がS&Pやムーデイなどの大手格付け会社のレポートに頼っている。

S&Pは米国国債を格下げし、ムーデイーはEU加盟国の国債格付けを引き下げる可能性があるとコメントしていることも、ユーロ売りが止まらない誘引になっている。格付け会社は、「市場の信頼を回復する手段が出てこない限り」格付け下げの可能性はあるというのだ。

しかし、こういった格付け会社の判断に頼る危険性も指摘されている。

クルーグマン教授は、そのコラム「米国債格下げ 問題は算術ではなく、政治にあり」で、S&Pは米国異常に信頼できない。アメリカの見通しについて判断を頼るのにS&Pは最もふさわしくないと言い、2008年の金融危機を引き起こす重要な役割をし、リーマン・ブラザーズも消滅するまで[A]の格付けをし、その責任を追及されると「何も悪いことはしていない」と抗弁したという。

最近記憶にあるのは、米国債を格下げするとき、2兆ドルの計算ミスが指摘されていたが、それを認めながらも結局は格下げを実施した。

しかも、格付け会社が格下げをする時期は、いつも市場よりも遅れているのだ。

ところが格付け会社にもいろいろあるようで、儲かるか、損をしていないか、ずいぶん稼いでいるが社会的、道徳的な振る舞いに感心しない会社もある。フランスのウィジオは社会的責任投資に熱心な人たちに参考になる格付けをし、国にあっては政府の政策の決め方が公正で透明性があるかどうかを判断し、投資家に有意義な情報を提供しているという(格付け 見えること見えないこと 朝日新聞2011.11.26)。

私たちは、格付け会社の判断に踊らされているが、良質な格付け会社に向け、しっかり規制すべきである。空売り、レパレッジ、利益に対する厳しい課税などファンドの規制と格付け条件、格付け責任など格付け会社に対する規制も必要だ。無謀な経済活動を許してはいけない。

と同時に、政治家も選挙を念頭に不人気な政策、財政健全化を先送りするようでは国民の生活を守っているとはいえない。グローバル化の中で財政規律を守る策が必要だ。

「国破綻し、格付け会社、ファンドあり」の社会などあってはならないのだ。

写真:EU首脳会議の内容を伝えるテレビ東京 WBS 2011.12.23

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