2012年1月20日金曜日

メタンハイドレート試掘:新資源としての期待と「燃える津波」の危険


愛知沖でメタンの試掘を
報じる読売新聞
2012.1.19

愛知県南方沖でメタンハイドレートの試掘を始めるという(読売新聞2012.1.19)。メタンハイドレートは次世代エネルギーとしての新資源として期待がある一方、巨大地震・大津波の震災時は「燃える津波」の危険がある。

メタンガスと水が低温高圧で安定に存在する。かってはパイプラインの閉塞事故を起こす厄介者だったが、深海堆積物の中に広く分布していることがわかり、燃える氷として次世代のエネルギーとして期待されるようになった。標準状態で換算すると、角砂糖1個分になかに牛乳瓶1本分のメタンがはいる。

一方で、温室効果ガスとしてCO2の約20倍の効果があり、掘削→層崩れ→海上浮上すれば海上燃焼で温室効果ガスの排出になる。

掘削調査は進んでいるようで、メタンハイドレートは、固体であるために自噴しないので、地層の圧力を下げて分解し、メタンを取り出すテストがされていた。いわゆる「減圧法」による回収だ。東海~熊野灘にかけてのボーリング調査でも天然ガス消費量の13.5年分の量がることも分かった(読売新聞 2011.2.20)。

メタンハイドレートの分布
NHKニュース10「氷が燃える」
2003.12
ところが、メタンハイドレート層は土砂が積もった大陸棚斜面に分布し、それが巨大地震の震源域と重なるから危険極まりないのだ。今回試掘が予定されている東部南海トラフ海域は、東海、東南海、南海地震の震源域にもなっているのだ。巨大地震、巨大津波が発生するとメタンハイドレートが海上に浮上し、海上爆発し「燃える津波」となり首都圏を襲う危険があるのだ。

すでにそれを疑う事例が出てきているのだ。私が保管している資料を検索した結果、「死都日本」の著者であり小説家で医師の石黒さんと海洋科学、地球科学者である東大名誉教授の奈須さんが2004年7月に週刊誌上で「燃える巨大津波が首都圏を燃えつくす」のタイトルで対談している。

それによると、1993年7月、北海道南西沖地震で奥尻島が大津波に襲われたが、同時に大火災が発生した。原因は電気設備の漏電発火となっているが、奥尻島周辺海域でも豊富なメタンハイドレートが存在することが分かったので、暴噴したメタンハイドレートが大津波に乗って陸地に押し寄せたと考えたほうが理にかなうという。

しかし、地震ではなく、自然状態でも大規模な海底地すべりでメタンハイドレートが暴噴し、大爆発する危険もある党言うのだ。その事例が2003年6月に鹿島灘沖で見られたという。夜間に謎の大爆発音と閃光が関東各地で見られたそうだ。気象庁は隕石落下が原因といったが、当日の夕刻に鹿島灘で発生した海底地震でメタンハイドレートが湧き上がり帰化したメタンガスが爆発した可能性があるともいう。

メタンハイドレートは東海・南海沖だけでなく、東京湾の玄関先でもある房総南海域、鹿島灘などにも広く分布しているので、大地震の際は首都圏にもメタンハイドレートの津波が襲いかかる危険があるというのだ。

昨年3月の東北地方太平洋沖地震では、大津波で海岸寄りにあったガスタンクが被害を受け爆発炎上、燃える浮遊物が押し寄せる光景を目の当たりにしたのは記憶に新しい。恐ろしい光景であった。

1993年7月の筆禍異動南西沖地震
で火災が発生した奥尻島青苗地地区
海上自衛隊50年史災害派遣より
メタンハイドレートは資源の少ない我が国にとっては期待される次世代エネルギーであることは間違いないが、その危険性も大きいので記事にしてみた。

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