2012年5月23日水曜日

東京スカイツリー、その明暗


向島3丁目からみた東京
スカイツリー
2012.5.23

22日、東京スカイツリーがオープンした。期待と不安の入り混じる大事業だが、その明暗も分かれそうだ。あの雨模様の中を多くの見物、観光客が集まったことは、地元墨田区ばかりでなく日本全国から期待される事業に違いはないが、ここは下町且つ近い将来発生するであろう巨大地震・東京湾北部地震の震源域に建つ634mの超高層タワーなのだ。

私も工事中に何回か見学、最近では開業1ヵ月前に見学したが、オープン翌日の23日、ウィーク・デイに様子見に訪れた。

新聞報道によると、施設全体で年間3200万人の来場を予定しているが、東京スカイツリーのために、この周辺のイメージも変わり都市開発が様変わりしそうなのだ。数校の大学のキャンパスも移転してくるらしい。

付近の商店街も観光客で売上増進を目論んでいるだろうが、それは期待できないのではないか。団体バス駐車場で係の人に「この観光バスは入ってから出るまで、どのくらいの時間ですか」と聞くと、「ここにいるバスは、だいたい2時間です」という。2時間というと商業施設ソラマチを出て廻りを見学する時間などない。そのためか、団体フロアーには記念写真撮影所がセットされている。絵で描いた東京スカイツリーを背景に記念写真を撮るのだ。

ソラマチ広場
観光バスも引っ切り無しに入ってくるのかと思ったら、駐車場の表示は空、ウィーク・デイのためだろうか10台程度だ。はとバスには「東京スカイツリーと浅草・隅田川ツアー」と表示されている。普通車の駐車場も空の表示になっていた。公共交通機関を勧められていたためか。

団体フロアーに入ると、この東京スカイツリーの足元部分の材料、技術を見ることができる。材料は高強度鋼管を使用、足元は直径2.3m、厚さ10cmになるという。これらを特殊な分枝継手でつないでいるのだ。メーカーがこのために新開発した材料だという。

外に出て、ソラマチ広場を歩くと、観光客、見学者が集まっているが混雑してはいない。数社のテレビの取材クルーがインタビュー相手を探していた。フジテレビ「知りたがり」のレポーターが年配の女性に「何時放送されるの」と聞かれていた。

634mの便乗商法もあった。「ひがしん定期預金」記念に店頭金利の6.34倍にするというのだ(531日まで 100億円で終了)。ATMの壁面が面白い。墨田区の旧町名が壁面にデザインされている。過去と現在と未来をつなぐ場所になることを想定してデザインしたという。

東京スカイツリーの足元部分 特別に開発された高強度鋼管
が使用されている
東京スカイツリーと商業施設ソラマチの年間入場者数を3200万人としているらしい。「新タワーによる地域活性化など報告書」では年間550万人(スカイツリーだけ?)、オープン当初をピークに減少するとみている。東京タワーが520万人だったが、今は50%減の270万人という。人気も長続きはしない。

観光バス駐車場 ほとんどのバスが
2時間の駐車
観光客はこれらの施設内で見学、買い物
を済ませてしまう。街に繰り出す観光客は
期待薄か
この報告書では街への来訪者を年間1260万人と見ていたが、今言われている約3200万人とどういう関係にあるのかわからないが、往々にして予測は大外れするものだ。

昨年、ある区議会議員が「地元商店街には観光客のカネは落ちない。いずれ衰退するだろう」と言っていたが、その通りかもしれない。商店主が「勝負は開業まで」とも言っていた。工事中の見学者が街に来てくれるまでが商売だというのだ。

ここは下町なのだ。向島3丁目を歩いてみたが、中小企業、古いアパートや民家が密集、東京スカイツリー施設とは別世界で静かだ。

そして忘れてはならないのは、首都圏直下地震とくに東京湾北部を震源とする巨大地震の震源域あるいはその極近に超高層タワーが存在するのだ。地盤だってそんなによくはない。日本全国で発生する地震の長周期地震動に襲われることになる。開業当日、風速15mでエレベーターが止まったというが、巨大地震での揺れは侮れない。

北十間川の水面に映った
東京スカイツリー
「けいせいばし」から
工事中はここがビューポイント
の一つだった。
水質の外観が悪い。
また粋と雅のライトアップは見事だろうが、LEDで消費電力は50%削減されているというが、問題は総電力量ではないか。相当な電力が使用されていることが想像される。

無事なオープンを迎えたが、高いところから東京を見下ろすことは東京タワーで経験している。東京スカイツリーがどう人気を維持できるか。そのうち明暗もはっきりしてくるだろう。

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