2012年6月4日月曜日

原子力村:エネルギー政策、原子力行政で謙虚な対応を


毎日新聞 2012.6.2

原子力村の存在が社会問題化してきた。原子力行政に口出しその報告書の信頼性が揺らいでいるし、公的機関の委員が原発業者から研究費名目で寄付を受け、何やら贈収賄まがいの行為も以前から指摘されている。原子力村を否定する者ではないが、もっと正しい方向で存在感を示せないのか。これほどの大事故の大きな要因になりながら、何の反省もなく、性懲りもなく暗躍する原子力村だが、脱原発も含めて今後の原子力行政、エネルギー政策に謙虚な姿勢が必要だ。

3.11東日本大震災による福島第一原発のメルトダウン事故は、地震、津波、総電源喪失と要因はいくつも重なって発生したとは言え、巨大地震、津波の危険性は東電内外で指摘されていたことであり、それを無視あるいは想定外として安全対策を取らなかった東電などの事業者としての責任は大きいし、安全軽視を業界トップの東電が主導した疑いもある。

経済産業省前に立つ脱原発テント
6月3日で267日目という
勿論撤去を要求されている
その東電などが原子力利権を守るために行政、財界、大学など研究機関で大きな利権構造である原子力村を築いていったことは容易に想像できる。

そういった動きは、原子力三原則「公開」、「民主」、「自主」に反することであり、このままで原子力を進めることは、いつか大参事を招くと指摘していた著名な物理学者もいたほどだ。

そして今、国の審議会、委員会の審議、報告書作りに原子力村関係者がかかわりその信憑性が疑われる事態が発生した。

毎日新聞(2012.5.24)によると、原子力委員会の「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」の報告書の原案が「勉強会」と称する推進派からなる秘密会議に示され、原子力村に有利な表現の報告書にまとまったという。委員長は議案ではなく、メモだったと抗弁し、「問題ない」との見解を示したようだ。

ところが、原子力委員会の「新大綱策定会議」で使用する議案の原案が秘密会議に事前に配布され、内容が追加されていることがその後わかったというのだ(毎日新聞2012.6.2)。

原子力委員会と原子力村は、そこまで馴れ合いだとすると、原子力委員会の存在自体が問題になる。
こういう委員会のニュースがテレビで報道される画面を見ると、ロの字型に並んだテーブルに委員が座り、パワーポイントで作成した資料を読んでいる姿が映る。事務局が作成した資料だろうが、事務局は担当官庁の担当部局が当たるので、当然に事務局の意向に沿った内容なのだろう。

それに文句を言われないように委員もYESマンを選ぶ。政府は審議会で審議した実績だけでいいのだ。大勢の委員の中には反対派や中間派も加え、多数決でYES になればいいのだ。

ところが以前、そういうやり方に反対し、委員自ら原案を書いた例がある。堺屋太一さんだ。なんの審議会か忘れたが、事務局に不満を示し、自ら書いたのだ。

他の審議会、委員会でも委員自ら報告書が書ける実力のある委員を選任したらどうか。事務局の案で是非を議論するだけで高額の日当を貰うなんて税金の無駄遣いだ。

次回の原子力委員会大綱策定会議
の開催をしないことになった旨通知
する原子力委員会HP
原子力委員会自体の在り方が問題になったためか、次回予定されていた小委員会の開催を中止するとHPに掲載があった。

脱原発を含めたエネルギー政策、原子力行政に専門家が参加しなければならないだろうが、原子力村の面々も姿勢を正し、正しい方向で存在感を示せないか。

空前の被害をもたらした福島第一原発事故を巡って原子力委員会、原子力安全委員会、原子力安全・保安院はその役割を果たしただろうか。全く力量不足だった。その反省もないままに、この体たらくだ、存在意識を問われるどころか、存在そのものが疑われる事態だ(河北新報コルネット社説 原子力委員会/回復不可能の腐食ぶり)。

全く同感である。

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