2012年12月5日水曜日

公約としての憲法改正:統治機構改革か、政策の差別化か、それとも選挙後の連携か

改正に厳しい条件が規定
されている日本国憲法

政権公約として憲法改正を謳う政党が出てきた。統治機構改革か、それとも政権公約の差別化か、それとも選挙後の連携か。憲法は国の根本体制で基本法だ。それだけに我が国の憲法は硬性憲法で改正には厳しい条件(発議→国民投票)が規定されている。それでも憲法改正を謳うのは統治機構の改革狙いか、それとも言われている「押しつけ憲法」への対応なのか。

主要政党の憲法に対する対応を比べると、民主党は現憲法を生かし、国民主権、基本的人権を尊重する護憲を謳えば、自民党は憲法改正、国防軍保持、自衛権の発動と積極的で、日本維新の会も自主憲法制定、首相公選制、参院廃止、日本未来の党は直ちに改正を行わなければならない課題はないとして改正には反対だと言う(朝日新聞2012.11.30)。

立候補予定者を対象にしたアンケート調査でも、改正賛成61%、反対37%(讀賣新聞2021.12.3)で2000年衆院選以降、5回連続で改正が反対を上回ったという。

現憲法については、「押しつけられた憲法」という発想から、この辺で我が国自身による自主憲法制定を主張する者も多い。しかし年配の憲法学者は決してそうではないという。連合軍から明治憲法に代えて新憲法を作成するように命ぜられ、素案を作って提出したが民主化が不十分と判断され、逆に連合軍が提案した憲法案を検討し採用したそうで、その時は専門家により、しっかり検討され決して「押しつけられた憲法ではない」と言うのだ。

では、日常生活で憲法に何か不都合でもあるのか。

14条の「法の下に平等では、1票の格差問題、育児などでの女性の社会進出の差別、同一内容の仕事でも賃金に差がある。第25条の健康で文化的な「最低限度の生活を営む権利」、「国の社会保障的義務」、第27条のすべての国民は勤労の権利を有する「勤労の権利義務」などでは、憲法の理想には遠く社会問題化している面が多いのは確かだ。

逆に、行政面、統治機構に関しては問題が多い。この面から憲法改正の必要が訴えられている。

例を挙げれば、「中央集権の打破」を目指した地域主権と最終的には道州制導入、「議院内閣制」に替わって首相公選制、「政治の停滞の要因になっているねじれ国会対策」での衆参統合・一院制導入、公務員改革、「保有しているが行使できない」集団的自衛権の行使、国防軍の設置、天皇の国家元首などだ。

しかし、多くの場合憲法改正が必要だが、現憲法は硬性憲法で厳しい改正手続きが必要だ。

96条(改正の手続き、改正憲法の公布)では、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が発議し国民に提案してその承認を経なければならない」と規定されている。

ところが、国民投票法は自民党時代に安倍政権で成立したが、各議院の三分の二は条件として厳しすぎるとして、二分の一に代えようという考えもある。確かに二分の一では可能性が高くなるが、その改正の根拠にこの第96条を考えているらしい。

でも、第96条の改正を第96条に根拠づけることには無理がある。それだけ改正は難しいのだ。

況んや革命でもないのに、新しい憲法制定などどうして出来るのか。

自民党の憲法草案を以前読んだことがある。天皇を国家元首にすることから始まって大幅な書き換えだ。

自民党や日本維新の会は、どういうプロセスで改正、制定しようとしているのか。

あるいは、憲法改正公約を選挙後の自民党・日本維新の会の連携(連合)のきっかけにしようと企んでいるのか。

統治機構の改革を訴えるのであれば避けて通れない憲法改正であるが、国の根本秩序を代えることであり、容易ではない。

それには憲法論議をしっかりやった後でのプロセスを検討すべきだ。

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