2013年1月7日月曜日

骨太方針復活:政策形成プロセスの透明性が課題?

自民党・安倍政権は経済再生で、休眠になっていた経済財政諮問会議を復活させると伝えていたが、小泉政権時の骨太方針も復活させるらしい。課題は、今度こそ政策形成プロセスの透明性が保てるかだ。

どの政権でも、政策決定時には政府、与党、官僚、民間での論争が付きもので重要政策がしばしば棚上げ、先送りされる。特に選挙を控えていると党の意向でその傾向が強くなる。

経済財政諮問会議の歴史をたどると、森政権の01年に発足、構造改革を旗印に抵抗勢力と戦かった小泉総理が活用し、民間委員、族議員、官僚と対決する構図に持っていった。

しかし、小泉政権末期になると、大半を党や官僚に丸投げで政治主導は影をひそめた。郵政民営化に勢力を使い果たし、やる気を失ったと当時、新聞で書かれたことを覚えている。歳出削減は政調会長だった中川さん、その穴埋めのための経済成長は経済産業相=官僚に託したのだ。

今までの政治主導での一点突破型では、調整に膨大な時間がかかることを考えると党と官僚に丸投げすることは効率的運用であると称賛したのは与謝野さんだった。

そして、「自民党は改革政党になった」と胸を張ったのは小泉さんだった。「改革に抵抗する自民党はぶっ壊す」といった手前、これでぶっ壊す必要はなくなったことを宣言したのだろう。

この政党に丸投げするやり方に民間委員から「与党主導は今回限り」と進言されたのが、当時の安倍官房長官だった。

安倍さんは「党の議論というのは、なかなか最後までわかりにくい」と政策決定での透明性の必要なことを説いている。特に選挙などが近づくと政策の優先度、内容に変更が加えられる。

メデイアは、小泉政権末期での09年骨太方針を「これが小泉改革の卒論か」と皮肉った。財政改革への踏み込みが不足していたのを指摘されたのだ。

重要な政策がうまくいったとは限らない。先送り、棚上げだった政策が反自民の政策を謳う民主党政権で取り組まれたことになる。国民に負担を強要する政策、難しい課題に取り組んだが、国民の理解を得ることができない不満から「自民党のしりぬぐいをやらされているのだ」と街頭演説で言ったのが民主党・野田総理だった。

民主党政権は稚拙な運営もあったが、気の毒な面も多かったのは確かだ。

それほど骨太方針と発表される政策も、内容によっては骨細方針にもなるのだ。

特に今までの民間委員の提言は、小さくても効率のよい政府、グロ-バル化、
少子高齢化を乗り切る、民需主導の経済成長の3点があげられる。

同じ提言が繰り返されているということは、未だ政策の効果が出ていないことだ。



いろんな攻防で先送り、棚上げ、自滅した政策を新聞記事から拾ってみた。

医療/介護費用の伸びの問題で、歳出改革のポイントとして「管理指標」の導入が議論されたが、厚生労働省は「管理指標は向かない」と主張し財務省と対立した。

官と民を競わせて官業を民間に開放する道筋をつける「市場テスト」の構想があったが、結末がどうなったか定かでない。

2010年代半ばに向けて債務残高(2006年 800兆円)の対GDP比を安定的に引き下げる政策があったが、歳出削減、増税に自民党が反対した。選挙に不利なのだから当然だろう。民主党・野田政権になって財務省主導の財政規律を掲げ、2009年のマニフェストにはなかった消費税増税へ突き進み先の選挙で大きな痛手を負った。勿論自民党も消費税増税10%を公約に載せて選挙戦を戦ったが、野党だったために無傷だった。

歳出削減の穴埋めに税制改革で消費税増税、富裕層に対する相続税の強化、所得税の増税は何時の時代にも政策に上がるが、選挙とも絡めてはっきりしない政策だ。

2007年は参院選を控えて自民党の要望で、不人気な政策は先送りになった。公共事業3%削減はダメ、ふるさと納税はOK、最低賃金の底上げもテーマに上がったが政労使の合意形成に従うと逃げた。労働ビッグバンも労働規制緩和で話題になったが、残業代ゼロ法案という批判から自滅した。成長戦略としてのEPA交渉も省庁、与党で反発が高まった。

公益法人見直しで、廃止、統合、民営化、役員削減、給与抑制、競争入札、天下り排除が上げられたが、如何にせん実施するのは省庁だ。うまくいくはずがない。民主党政権になって「事業仕分け」で政治ショーを演じたが成果は今ひとつだった。

私も聞きに行ったが、民間に仕分け人が官僚を相手に突っ込む質問に官僚側は答えに詰まるシーンが多かったし、言い訳が長かった。それはそうだろう、説明しにくいことを利権がらみでやっていたのだ。でも、廃止、縮小判定が出た事業が相変わらず姿を変えて続いていることに官僚の抵抗の大きさが分かる。

問題になっている社会保障費も自民党政権では5年間で1.1兆円(1年間に2200億円)の削減を謳ったが、民主党政権は逆に手厚い対応をした。選挙戦で野田さんが街頭演説で力説していた政策の一つだ。

骨太方針の政策に上がってくるが、実施に向けては相当の抵抗を受ける政策、政策に上げること自体に抵抗のある政策、政権が変われば変質して行く政策、選挙を控えて先送り/棚上げされる政策と政府、与党、官僚、民間委員入り乱れての攻防が続く。

一番大事なことは、「政策形成プロセス」をどう透明化できるかだ。従来のように与党との調整を重視すると政策決定の透明性が失われるのだ。

安倍総理は、小泉政権時の官房長官として、この点を学習しているはずだ。強いリーダーシップを期待する。






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