2013年2月18日月曜日

デフレと金融政策:論争点は「デフレは不況の原因か、結果なのか」


デフレ脱却に向けて金融政策論争が激しさを増しているが、その論争点は「デフレは不況の原因か、結果なのか」であり、どちらに立つかにより政策も違ってくる。安倍政権がよりどころとするリフレ派はデフレが不況の原因で、金融政策でインフレに転換出来ると言うが、デフレ派は不況がデフレの原因で金融政策は効果が無いと真っ向対立するのだ。

ここで重要なのは、経済がゼロ金利下にあることだ。ゼロ金利の下では金融政策がデフレ脱却の為に果たし得る役目はきわめて限られてくる。デフレと金融政策を巡る論争は、混迷する現代マクロ経済学を反映しているという(「デフレーション」 吉川洋 日経新聞出版社 2013.1.8)。

実際に今まで日銀は非伝統的金融緩和を実施してきたが、市場にはカネがダブついているのに、デフレ状態が続く結果になっていた。

ところが、安倍総理(当時は自民党総裁)が大胆な金融緩和、2%の物価目標を掲げて選挙戦を戦いだして市場は反応し、円安、株高基調に替わってきた。民主党政権、日銀のこれまでの政策が間違っていたのではないかと考えられるようになった。

丁度、18日のNHK参議院予算委員会の国会中継で民主党の小川議員、桜井議員が民主党政権と安倍政権での金融政策の違いを質問していた。

民主党政権も「2%以下のプラス、当面1%目途」で、民主党と考えは同じではないかと追求するが、安倍総理は市場が反応しなかったではないか。替わらなかったではないかと反論する。

今、資金は流しているが物価は上がらない。金融緩和で物価が上がるのかとの質問に、
2%と言う物価目標が示されていなかったし、達成責任も明確にされていなかったと安倍総理は答弁する。

安倍総理は金融緩和→円安、株高→企業利益アップ→投資、給与増→物価上昇の道筋を描いているようだが、今は相場に影響が出ているが実体経済へはこれからだ。

2%の物価目標は、2%達成まで緩和を実行するのか、それとも達成できる見通しがついた時点で止めるのかの質問に、安倍総理は2%の安定目標達成には専門家の判断によると言い、判断するのは日銀の仕事であると言及を避けた。
そして2%と言う物価安定目標を設定している国にハイパーインフレになった国はないと巷間言われているハイパーインフレの危険を打ち消した。

日銀は十分な金融緩和をやっていると思うかとの質問には、安定目標設定、達成責任が明確でなかったので十分とは言えなかったと言うが、現在執っている手段に対して介入することになるのでコメントしなかった。

「デフレの原因は何か」という本質的な質問が出た。

安倍総理は、「貨幣現象」で、金融政策で対応し2%物価目標は正しい方向だと答える。貨幣を増やせば物価は上がる。デフレは脱却できるというのだ。カネはどこに行くのかというと、国債、外債、株式などが考えられるのだ。

これは標準的なマクロ経済学の考え方なのだ。でも、今まで日銀は非伝統的な金融緩和で量的緩和を進めてきたが、効果が上がらなかった。市場にはカネがダブついたままその先にカネが行かない。

麻生財務相は、金融緩和は第一の矢、株式や為替に効果が出て民間に行くには、第二の矢、第三の矢の財政政策、成長戦略が必要だと真っ当な答弁をした。金融緩和に重点を置く安倍総理とは少し考え方が違う。

デフレが不況の原因であれば、大胆な金融緩和で市場にカネを流せば物価も上がるだろう。今まで効果が無かったのは、安倍総理に言わせると2%物価安定目標がなかったことと、日銀に責任を持たせていなかったことだが、本当にそうなのか。

一方、デフレは不況の結果だと考えるとゼロ金利下での金融緩和は効果がないことになる(吉川洋 同上「デフレーション」)。

他の先進国も低インフレの時代に入ったが、日本だけがデフレにかかった原因は、雇用システムが崩壊し、賃金の低下がデフレを定着させたという(吉川)。雇用システムが変容していったのだ。

現代マクロ経済学は「よく言って全く役に立たない、悪く言えば有害なものだとクルーグマン教授は言い、世界の中央銀行がゼロ金利の下で手探りで続ける試行錯誤を支えているのは「古いマクロ経済学だ」と言う(同上)。

どちらの主張が正しいのか。その判断は、どのくらいの円安と株高がいつまで続くかだ。

今書店では、「アベノミクス」に関する出版物が店頭に並んでいる。気になることはネガティブな内容のタイトルの本が多いことだ。給料が上がり家計が潤いインフレ気分が出てくるまでには時間がかかりすぎる。それまで安倍政権は持つかもきがかりだ。

この危機的な状況のなかで、白川氏が総裁でいたことのありがたみをかみしめるべきだ。次の総裁が誰になるのか全く不明であるが、「アベノリスク」がさらに進み、最後は「アベノミス」などとならないよう心から願う次第だ(世界を救った「気遣いの人」 AERA2013.2.25)

辞任する白川総裁の功績を称えるこの文に、国民の願望がある。

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