2013年5月26日日曜日

経済界は、日本の経済社会をどうしようとしているのか

日本経済団体連合会
経済界は、どんな経済社会を構築しようとしているのか。日本の経済社会をどうしようとしているのか。第3の矢・成長戦略が発表されると経済界トップは評価するが「おねだり」ばかりの経済界で、自らは何をしようとしているのか。「円安の今、やるなら 今でしょう」ということになるのだが、「政府・日銀笛吹けど企業踊らず」の構図ではないか。

期待感だけで株価、金利は乱高下する有様で、実体経済への波及としては「名目3%成長」、「雇用の創出」、「賃上げ」で「内需拡大」が目に見えてこなければ、一気の日本売りが始まる危険にさらされている。

円安傾向で、製造業の国内回帰が始まるのかと思っていたが、中国、韓国からミャンマーへ生産シフトするばかり。企業が設備投資を急いでいるが海外戦略転換で収益構造を変えるだけなのだ。

確かに国内は、未曾有の課題を抱えたままだ。

デフレ脱却、円高/株安対策、景気対策を目指す財政政策の一方で財政再建、原発再稼働に絡んだ不安定な電力供給、社会保障負担増、法人税率見直し、失業なき労働市場、TPP交渉など課題が多く、それがすべて企業活動と関連している。

デフレ脱却を目指した大胆な金融政策は、円高→円安、株安→株高へ転換したかに思えたが、1日に1000円も変動する株価、長期金利の上昇、それに伴う為替相場の急変動は企業活動の安定化には支障となる。

「日本経済再生に向けた基盤
整備 」 日本経済団体連合会
HPより
経済界は、今の状況をどう考えているのか。「日本経済再生に向けた基盤整備(2013.5.22 日本経済団体連合会)」が目にとまった。

「期待」を実体経済に波及させる「実感」に変えていくチャンスだと言い、需要の創出、投資や消費を喚起する成長戦略が欠かせないという。

そのために、国際的な事業環境のイコールフィッティングの確保のために5つの政策課題を考察している。

電力の供給不安、節電要請、電力料金の高騰は55%国内設備投資を減らすと、原発再稼働、買い取り制度の見直し、地球温暖化対策税廃止を提言している。指摘の通りだと思うが、原発再稼働問題は国民的コンセンサスが必要だ。原発は安全文化の劣化の張本人だ。

社会保障負担増で、経済界は賃上げ、雇用に慎重になっているという。事業主負担、法人所得でGDP比7.6%(2009年)になっており米5.0,韓国6.3,英国6.7に比べても高いというのだ。だから自助、共助、公助で社会保障改革をやれといい、税負担増を要求している。

法人税率実効税率も2012年38.01%、15年35.64%になるようだが、アジア諸国並みに25%に下げろという。でも、日本共産党の主張では企業は30%より低い税率になっているのではないか。日本は大企業、富裕者を優遇する税制なのだ。

それ相当の負担をするべきだ。

労働市場でも、失業率を低くするために、長期のデフレから脱却出来ず、構造改革の遅れる結果になっている。成長産業への失業なき労働の移動のために労働者派遣制度の見直し、職業照会機能の強化、公的職業訓練の拡充が必要だという。

昔の経済学書では、「労働力はスムーズに衰退産業から成長産業に移行する」と書かれていたと思うが、これは嘘だ。職業訓練は採用した企業が実施すべきで公的機能訓練など役に立たないのではないか。

要は企業がより良質な労働力をどう再生産するかだ。使い捨ての労働力の考えではうまくいかない。

経済循環の中での企業活動
(同上)
この資料で、「経済循環のなかでの企業活動」が紹介されている。

企業による付加価値生産額は275.1兆円で、政府の財源になる租税公課に9.1兆円、社会保険給付である社会保険料負担などに22.6兆円、政府財源と設備投資に当てる営業利益29.7兆円、雇用者報酬177.3兆円になっている。

ところで、260兆円を越える内部留保はどうなっているのか。クルーグマン教授が言うように労働者の犠牲の上に成り立っている企業利益を考えると複雑な思いだ。

最後に、企業自らが主体的に進化して競争力や生産性を高め、付加価値生産額の増加に努める必要があると言い、安全、安心な経済社会の構築といった諸課題についても、解決に向けた企業の取り組みが求められると企業活動の重要性を力説、政府の第3の矢をしっかり受け止めて、民主導の力強い経済成長に向けて貢献する決意を表明している。


政府は規制改革、構造改革を進めるとともに、企業は雇用の創出、賃上げに果敢に挑戦する姿勢が必要だ。長く続いたデフレ下での利益確保の構造に浸ることなく、内需拡大の向けた意識改革が必要なのだ。

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