2013年9月29日日曜日

地球温暖化:IPCC第5次評価報告は各国政府を動かすことが出来るか

最近(1986~2005年)と今世紀末
(2081~2100年)を比べた気温
の変化
IPCC第5次評価報告書要旨(気象庁)
地球温暖化に対するIPCC第5次評価報告書が公表されたが、これで各国政府を温暖化防止に動かすことが出来るか。IPCCが27日の第36回総会で自然科学的根拠の根拠を公表した。根拠となる最近の知見をまとめたのだ。

第4次評価報告書では、その信用を失いかねない不祥事、記述事象のミスが指摘され、地球温暖化防止への対応も各国の思惑があり進展していない。それを打破するには第5次評価報告書の内容にかかっていたのだ。

気象庁のHPから第5次評価報告の要約を開いた。正式な報告書は2000ページに及ぶらしいが要約は15ページで私でも読むことが出来た。

主な結論として、温暖化については疑う余地はないが、最近15年の気温上昇率は、過去60年の上昇率より小さいという。つまり気温の上昇が「小休止」しているというのだ。確かに世界の年平均気温偏差を1981~2010年平均からの差(℃)で見ると、横ばいの傾向だ。一方、CO2濃度は上昇を続けているのでCO2人為説を否定する見方も出来る。

でも、これは自然現象の一環であって、また気温上昇へ向かうと専門家は見ている。

観測事実としては、海洋(0~700m)で水温上昇、3000m以深の海洋深層でも水温が上昇している可能性があると見ている。

氷河も世界的に減少し北極では積雪面積も減少し続けるという。

海面の上昇も、19世紀中頃以降の水位の上昇率は、それ以前2000年間の平均上昇率よりも大きいという。

温暖化の要因としては、人間活動が20世紀中頃以降、温暖化の主要因であった可能性が極めて高いと言う。第4次では90%だったが、第5次では95%まで上がった。

又、CO2の大気中の濃度増加は地球のエネルギー収支の不均衡に最も大きく寄与しているが、太陽放射は20世紀にわたるエネルギー収支の不均衡にほとんど寄与していないと言う。

天体物理学者、気候学者の自然変動説を切って捨てたのか。

エアゾロルや雲はエネルギー収支に最も大きな不確実性をもたらす。これはよく指摘されていることだが把握が難しい。理化学研究所や東大の研究チームがスーパーコンピューター「京」で全地球の大気の状況を精密にシミュレーションし、局地豪雨などの解明に期待出来るようになったと先日新聞で報道されていた。

そして、将来の予測として、2010~2035年の世界平均地上気温の変化を0.3~0.7度の間の可能性が高いと予測している。

1986~2005年を基準として、1986~2100年における地上平均気温変化と海面水位上昇を4つのシナリオで予測している

定位安定シナリオ(RCP2.6)では気温変化0.3~1.7℃、海面水位0.26~0.55m、中位安定化シナリオ(RCP4.5)では、1.1~2.6℃、0.32~0.63m、高位安定化シナリオ(RCP6.0)では1.4~3.1℃、0.33~0.63m、高位参照シナリオ(RCP8.5)では、2.6~4.8℃、0.45~0.82mとなっている。

これより、新聞で報道されている今世紀末、気温は最大で4.8℃、海面は82cm上昇するというのは、RCP8.5のシナリオなのだ。

本来であれば、排出削減対策が作成され、その緩和策を前提にシミュレーションし評価するところであるが、緩和策がないので将来の温室効果ガス安定化レベル、そこに至るプロセスの代表的なものを選んでシナリオを作成し、そのシナリオで予測、評価を行ったという。

その結果、地上では極端な高温の頻度が増し、中緯度大陸のほとんどが湿潤な熱帯域、極端な降水がより強く、頻繁になる可能性がある途指摘している。

益々強力になる台風、局地的豪雨、高温続き、熱帯夜など今年の異常気象は温暖化が影響していると皆思っているはずだ。

ところが不思議なことに、温暖化防止の特集、特別番組など見たことがない。やはり地球温暖化原因説、地球温暖化防止への取り組みが遅れているのが原因ではないか。

それでも、新しい見解としてCO2累積排出量と世界の平均地上気温上昇量は、ほぼ比例関係にあると言ってのける。

CO2濃度は工業化以前より40%増加し、CO2の約30%を海洋が吸収、海洋への炭素蓄積は海洋の酸性化を生じている。珊瑚礁などの死滅は海洋資源の減少に大きく影響していることは新聞でも報道されている。

一方で、ジオエンジニアリングと呼ばれる気候変動に対抗する技術が提案されているが、その手法、気候システムに与える影響について評価が不可能という。

たとえばSO2の注入、CO2を地中や海中に注入する技術のことを言っているのだろう。

低位安定化シナリオ(RCP2.6)の0.3~1.7℃に押さえるには各国政府は相当の対策を打ち出す必要があるが、今のような状況では無理だろう。

それでも、205年までに0.3~0.7℃上昇する可能性が高いというのだ。今は、気温上昇も「小休止」の状態だが、再び上昇に転じるのは間違いないらしい。

CO2人為説を採って世界的な削減対策を推進するのも大変な作業であるが、自然変動説を採って何もしないのもどうかとも思う。


観測値と人為起源、自然起源モデル
同上
やっぱり、シミュレーションのアルゴリズム、どういうデータをインプットしてこのような結果を導いているのかを知りたいところだ。

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