2014年4月20日日曜日

「脱ゼロ金利」のすすめ:アベノミクスも期待薄、消費拡大には金利を上げたらどうか

そろそろ低金利(ゼロ金利)を止めて、消費拡大のために金利を上げたらどうか。そして金融政策の正常化を急ぐことだ。アベノミクス、日銀の量的・質的金融緩和から1年、今の日本経済の見方はエコノミストで違っているが日銀は増税で一時的に振れるが、基調的には「緩やかな回復」で2%の物価安定目標にむけその道筋を着実に進んでいるという。雇用、所得環境も改善し個人消費、住宅投資も底堅く推移しているというのだ(4月8日 日銀総裁記者会見要旨)。

FRBは米国内消費者物価上昇2%、失業率も6.7%で目標の6.5%に近づき雇用も改善、今秋には量的緩和を終了しようとしており、金融政策の正常化を目指し金利上げ(中立的金利水準4%)も視野に入ってきたようだ。

一方の日銀は、2月の消費者物価は1.3%で1%台前半で推移し、2014年末~2015年度にかけて「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみており、追加緩和は考えていないが消費税増税での下振れが懸念されれば躊躇なく対応するというのが黒田総裁の口癖だ。

雇用も日銀は構造的失業率を3%台と考えているようだが、政府発表の失業率も3.6%と完全雇用に近い状態だ。

FRB的に考えると我が国も量的緩和を縮小したらどうかと思うのだが「年間60~70兆円のペースで続行する(3月10,11日 政策委員会金融政策決定会合議事録)というのだ。270兆円に向け、今208兆円になっているらしい(讀賣新聞2014.4.3)。無担保コールレートは0.1%を下回っているが、白川総裁の時のように政策決定での記述はない。

ところで日銀の金融政策は効果があったのか。

マネタリーベースを増やし、株価は14000~15000円で推移、20000円にまで上がるのかと思っていたが5月には12000円台に下落するという見方も出て来た。為替は戻ったと言うが102円前後、物価も2%目標を今のところ下回って民間予測では達成不可能とみている。

マネタリーベースを高めても長期金利はそんなに下がらない。投資の刺激も出来ていない。マネタリーベースも75兆円増加したが、市場には35兆円しか流れていないのだ。

当然に効果があるのかという議論になる。

安倍総理、日銀がインフレターゲット設定、異次元の金融緩和を唱えたとき、経済学会では「あまり効果はない」「低金利下では金融政策は効果が薄い」と言われていた。

これに関して4月8日の日銀総裁記者会見でも記者から質問が出た。黒田総裁は「現時点では、恐らく日米欧で実施されている量的・質的金融緩和が一定の効果を持っているというのが学会の多数意見ではないか」と述べている。

経済学的議論は、実験が出来ないのでいろんな意見が出て、100%収束することは難しいとはよく言われることだ。だからといって、政府、日銀と民間エコノミストの見方の違いには困惑する。

でも政府、日銀のコメントは自分たちの決めた目標に向かって期待感をにじませた戦略的意味合いも強い。

でもアベノミクスへの期待も薄らいできた。

安倍総理はアベノミクスの評価を株価に求めている。その株価も14000~15000円台で余り動かない。下落の心配も出て来たが年金基金で株価を維持しようとしている。円高から円安へ転換でき輸出産業に恩恵をもたらし株高で企業収益も上がったが、輸出も数量は微増で、為替差が大きく貢献していると見られている。すでに海外へ工場を移転しているので、今後輸出が伸びる可能性は疑問だ。

内需拡大を目指し法人税下げで海外からの企業の誘致、企業の活性化、企業に賃上げを要請して家計収益の増加→消費拡大を狙ってもいるが、ベースアップは大企業で一定の効果はあったが「津々浦々まで」の恩恵はない。アベノミクスでの円安は49%の中小企業にとってはデメリットらしい。

内需拡大は企業の儲けを如何にして家計に分配できるかだが、長い期間のデフレ下になれた企業にとっては意識改革も大変なのではないか。

思い出すのは、朝日新聞2013.8.14の経済気象台「ゼロ金利の罠」だ。

スタンフォード大学のロナルド・マッキノン教授は、「主要国が金融緩和をやり過ぎてしまったために金融機能が阻害され、為替も理論通りに動かなくなってしまった。金利を徐々に正常化させた方が投資や生産を刺激し、景気にプラスになる」と訴えている。

私も同感だ。早く金利を4%まで徐々に上げていくことだ。企業が銀行からカネを借りにくくなると言う考えもあるが、安倍政権の成長戦略も効果に期待出来ない。マネタリ-ベースをあげ1年間で75兆円増やしても市場には半分の35兆円しか流れていないことを考えるとこの考えは当たらない。

預貯金の金利が上がれば家計にも余裕が出来、消費も増え経済の好ましい循環が始まるのではないか。

家内は毎日買い物に行っている。「消費税も上がったのだから節約したらどうか」というのだが、我が家は大人4人、子ども3人の食事を賄う必要がある。新聞折り込みのスーパーのチラシを見ながら安い品物を求めての買い物だ。

家内は「でも貯金は減っていないのよ」というがエンゲル係数は高い。預貯金の金利が上がれば、もっと消費に貢献出来ると思うのだが。

ただ過去に日銀は失敗して例がある。

速水総裁の時だったと思うが、日銀は金融政策の正常化を急ぎ利上げに踏み切ったが、景気後退で直後に利下げをせざるを得なくなった。

このとき、政府は景気が悪くなると言うことで反対していた。景気回復という目標を達成できないままでの日銀の政策転換に政府は警戒しており、2%物価安定目標の達成時期で安倍総理は日銀をけん制していた。

当時と今とでは状況がどう違っているか検討しなければならないのは当然だ。


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