2014年7月17日木曜日

川内原発・1,2号機再稼働へ一歩:新基準合格でも安全とは言わないのだ

3年停止状態だった川内原発1,2号機の再稼働に向けて規制委員会は「新基準合格」とするも、安全とは言わないのだ。原発地下には活断層はなさそうだし、津波対策だって高所に立地するために小規模な対策で済むことが他の原発に先んじて合格判定したのだろう。

テレビ朝日 報道ステーション
2014.7.16
しかし、これで決して「安全だ」と田中規制委員長が言ったわけではないのだ。

特に今まで論じてこなかった火山噴火による降灰、火砕流被害は「噴火は予知できる」という見解を取っており専門家と考えが異なるし、避難計画では自治体と住民の見解が違っている。

更に振り返って東電・福島第一原発事故を考えたとき、巨大津波による要因が大きく報道されているが巨大地震による設備に被害はなかったのか。未だ根本的なところで疑問が残っているのだ。

今回の川内原発については、基本的に新規制基準に照らして合格というのだ。

原発地下には活断層がないと言うが、近くには断層とか破砕帯が見受けられるのだが、地震や津波の想定について九電の評価を了承した形だ。

津波対策では、元々高所に立地しているために特段の津波対策は必要としていない。南海トラフ巨大地震でも宮崎県の串間市では17mと予測されているが、反対側この辺では3m程度か。

冷却ポンプ車、電源車は1300億円かけて配備すると言うし、フィルターベントは5年間の猶予、免震重要棟は2015年の設置予定だ。福島第一原発事故では重要視された施設も猶予されている。

そして、審査の対象にはなっていないが、避難計画は自治体と地元住民の間で考え方の違いが大きい。5km圏内の5000人は避難、5~30km圏内の21万人は、まず屋内避難とされているが住民は「密閉された部屋がない」と不安がる。

特別老人ホームなどは孤立化が懸念されている。10km圏内は県が作製すると言うが、10~30km圏内は自分で避難計画を作れというのだ。避難経路も万一の時は危険で、しかも鹿児島市内までは50kmもある。施設毎の計画作成は無理な状況だ。
しかし、なんと言ってもこの辺で心配なのは、桜島、阿蘇山の噴火だろう。

姶良カルデラのようなカルデラ噴火は十万年も起きていない。そろそろ何かの前兆があっても不思議ではないと言う(東大地震研究所噴火予知研究センター 中田教授)。

しかも川内原発、玄海原発の付近には火砕流堆積物も見つかっている。姶良カルデラ噴火の火砕流が川内原発に到達した可能性もあるのだ(毎日新聞2014.6.26)。

新規制基準では原発の半径160km以内に火山の火砕流や火山灰が到達する可能性を調べ、対応できないと判断されれば「立地不適」で廃炉になる。

火砕流の到達の可能性と九電は火山灰も15cm積もると想定して対応を考えているようだが、代替電源の確保、物資、作業員の確保などほとんど不可能ではないのか。

それでも合格したというのは、「噴火は前兆がつかめる」ことを前提に対応が可能と見ているのだろうが、火山噴火予知の専門家は、「火山噴火の中長期の予知は出来ない」と断言している。

規制委員会の見解は非常に楽天的なのだ。

GPSによる地殻変動で火山噴火、地震発生が予知できる可能性も出ているが、東大名誉教授の村井さんは2013年7月、川内原発近くで地殻変動が観測され、年末までにM6クラスの地震発生を予測したが的中はしなかった。

的中しなかったからダメというのではなく、地震予知が不可能に近いのだ。ところが7月12日の福島県沖地震M6.8をHazard Labが的中(?)させている。どんな技術で予測したか分からない。

例え的中しなかったとしても批判してはいけない。

川内原発の規制委の「規制基準に適合」の審査書案は、政界を始め、産業界、地元に大きな期待を持って迎えられたが、一方で近辺住民などの不安は積もるばかりだ。

東電は、リーデイングカンパニーとしての驕りが、安全軽視の原発電力供給業務となった。

田中規制委員長は、川内原発の安全性を「世界最高レベル」と評価した。それでも「安全とは言わない」というのだ。

一つ一つの設備は安全基準に合格したが、立地も含めた川内原発システム全体では「安全とは言いがたい」のか。 


川内原発周辺の火山、活断層
1914年には桜島の大正大噴火で1ヶ月に分かって爆発を
繰り返した。九州から東北にかけて広い範囲で降灰を観測。
1997年には鹿児島県北西部地震でM6.5が発生した
SAPIO 2014.4


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