2014年8月9日土曜日

ブラック企業「すき家」の赤字転落:従業員を使い捨てにする企業の結末か

牛丼チェーン「すき家」が従業員の過酷な労働があだになり「人手不足」から経営改善が必要になり赤字転落、一時は脚光を浴びることになったが従業員を使い捨てする企業の結末となった。

「すき家」というと深夜に強盗に入られる事件が続き、どうしたのかと思っていたが深夜の一人勤務と手薄になったときに強盗に入られることになったのだ。深夜に一人勤務とは物騒だ。

そのうちに「すき家」の労働環境の過酷さが浮き彫りになり労働基準監督署からの警告も無視し、アルバイト、パートの非正規従業員の酷使で企業収益を上げていたのだ。先の第三者委員会の調査報告はこれが上場企業のやることかと驚くばかりだった。

しかし、そんな悪行は長続きしない。景気が好転すると「人手不足」をきたしたが「従業員を使い捨て」にする企業に人が集まらなくなった。当然のことで深夜業務、店舗拡大にも支障が出てくるようになり営業の縮小を余儀なくされ今まで通りの拡大経営は出来なくなった。

赤字転落は当然で一気に企業評価が下落した。

余った労働力をサービス産業が吸収する第三次産業の重要性が叫ばれたが、第2次産業である製造業に比べ賃金を含めた労働環境の悪さは問題になっていたが、サービス業は個人経営、小企業が多く改善は難しい状況だった。

最近では長時間労働、従業員の自殺、残業代ゼロなど反社会的企業を「ブラック企業」と言うようになり、当該経営者の「ブラック企業」否定の発言が飛び交った。

そして、8日、どういうわけか知らないが2大新聞が「すき家」を社説で取り上げた。

朝日新聞が「すき家の教訓 使い捨てにはその報い」で、従業員を大切にしない企業には、しっぺ返しがある。経営者は胸に刻んで欲しいと言い、読売新聞が「すき家過重労働 赤字は従業員軽視のツケだ」で取り締まりに当たる労働基準監督官は、労働者1人あたりお0.5人で、多くの主要国を下回っている。政府は違法行為の監視・摘発が十分かどうか、しっかり点検して欲しいという。

ほとんどの大企業も従業員数削減、給料カットで人件費を抑えた経営に走る一方で巨額の内部留保、株主還元を行ってきた。クルーグマン教授も「今の企業収益は、労働者を犠牲に上に成り立っている」と言わしめた程だ。

ところが全ての企業がそうだったわけではない。従業員の首切りもせず、製品の品質特化で収益を上げ経営者と従業員の信頼の上に好経営を続けている企業もあるのだ。

週刊新潮(2014.8.14)の「墓碑銘」で未来工業の山田照男さんが紹介されていた。

電気設備資材メーカーの未来工業は約800人、グループ全体でも1100人の企業だが、就業時間は1日7時間15分、残業禁止、年間休日140日、定年は70歳、育児休暇は3年という先取りしたうらやましいほどの企業風土だ。全員が正社員で連結売り上げは352億円、経常利益は約51億円だ。

80種類以上の製品を持っているが、主力は3種類で他は赤字だという。誰かが言っていたが、赤字製品があるから製品の改良など経営が出来るので赤字は決して悪くないというのだ。

経済学者の森永卓郎さんがコメントしていた。「近年は道具のように人を使うが、人をコスト扱いにして利益を出しても未来はない」、「山田さんの経営は人が生きる上で理にかなっている」といい、「今こそ必要な成長戦略の手本だ」と評価する。

デフレ下で経営が厳しい時も従業員の雇用を守り続けた中小企業の経営者の話はテレビなどで紹介されている。財界のように「おねだりばかりする」ことを批判する経営者もいた。

そして企業の収益を重視した新しい株価指数「JPX日経インデックス400」でも営業利益、時価総額、コーポレートガバナンス、情報公開などを加味した400銘柄を選定し、年に1度入れ替えをすると言う。

今回ブラック企業「すき家」を経営するゼンショ-・ホールデイングも社会問題化と株価の低迷で除外対象になったという。

経営者も襟を正してやっていかなければ市場の評価を得にくくなるのだ。


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