2014年9月2日火曜日

消費税10%への是非:8%の結果も不明確なまま10%へ突き進むのは無謀ではないか

消費税増税で8%の結果も不明確なままで、10%へ突き進むのは無謀ではないか。消費税8%の反動もある中で消費税10%への決断時期が迫ってきたが、経済ブレーン、経済学者、エコノミスト、政治家そしてノーベル賞受賞経済学者のクルーグマン教授などがそれぞれの視点で見解を述べている。今年4~6月期のGDPが前期比でマイナス6.8%と大きく落ち込んだことが議論を広げている。

それでも政府、日銀は「緩やかな回復基調」と強気の見方を示している。アベノミクス、異次元の量的緩和の成果を主張すると共に、「期待感」を煽っているのだろうがアベノミクスへの失望は国内はもとより海外でも大きい。海外ファンドもすでに知っていて、次にどう動くか注目だ。

アベノミクスと言っても成果(?)を上げているのは「第一の矢」だけで、第二、第三の矢はインパクトに欠けるのだ。

円高から円安で、物価上昇は悪循環の様相を呈し、株高も絡んで企業収益は上がったが、家計収入はマイナス、消費税8%の反動で個人消費は落ち込んでいる。

もうすぐ2%の物価上昇を達成しなければならないが、日銀の強気の見方に反して、民間のエコノミストは1%台とさえない。黒田日銀総裁、岩田副総裁は首を洗って待っていた方が良さそうだ。そのためか、しきりに政府の成長戦略を言及するが、前の白川総裁も言っていたことだ。

FRBが量的緩和を終了し、利上げが課題になってくるが、日銀は相変わらず量的緩和で市場にジャブジャブカネを流す。長期金利は0.495%(9月1日)と0.5%を切った。

失業率も確か3.6%と改善しているが、その内容は非正規労働者の割合が増えているのであって、決して内容が良いわけではなく、米国も同様だ。

少子高齢化対策としても、若年労働者が正規従業員として年収300万円の結婚へ希望の持てる待遇を受けるようにならなければならないが、実情は程遠い現状だ。

経済指標も良くなったり、悪くなったりを繰り返し決して日本経済が良くなったわけではない。

そこで、安倍総理の経済ブレーンと言われる浜田さん、本田さんが10%消費税増税へ慎重論を唱えだした。浜田さんは8%へ上げるときも、一時延期するか、段階的引き上げを提案していた。

浜田さんは、日銀は追加金融緩和を迅速に判断すべきであるが、消費税8%での影響、雇用情勢、需給ギャップの改善が足踏みするようだと「断固として」消費税増税を反対するという(REUTERS 2014.2.24)。

今も状況は変わっていない。需給ギャップもこの前プラスになったと思ったらすぐさまマイナスに転じ供給過剰た。

本田さんも、4~6月期のGDPマイナス6.8%の落ち込みは楽観できる状況ではないし、今の皮膚感覚で言うと状況は良くない。民間の消費と設備投資がどこまで増え、自律回復するかどうかを注視する必要があると言う(読売新聞 2014.9.2)。

一方で、東大の井堀先生は、消費税増税は財政再建という中長期的課題だから直近の経済動向に関心を払うべき筋合いの問題ではない。行く行くは経済成長率は人口減などでマイナスになる。支持率が高いうちに抜本改革に踏み込めとも言う(読売新聞 2014.9.2)。

こういう経済学者も多い。

政治家も予算編成に余裕が出来、公共事業などで利権を守ろうとする者は、今の経済情勢でも消費税増税に賛成だ。国の借金がどうなろうが意に介しない。

異論続出の中で安倍総理はどう判断するのか。7~9月のGDPの結果を見て判断と安倍さんは言っているが、良い結果が出る見込みは今のところなさそうだ。

日本経済再生に、財政出動(成長戦略)と財政再建は車の両輪だと言うがそんなうまい手があるのか。

IMF,G20は各国の財政健全化を謳っているがGDPの200%、1000兆円を超す債務を持つ日本は特例扱いになっている。財政再建には歳出を抑える必要があるが我が国は成長戦略で財政出動に走り、消費税増税が財政再建の切り札になっている。

もし、消費税増税を先送りすれば、国際社会での信用問題に発展しそうだ。

成長戦略を推し進めようと予算要求枠も101兆円を越え、過去最高の予算規模だ。財政出動で成長戦略にのり、企業収益が上がれば家計にも再分配し消費を押し上げる。うまく行けば経済の好循環に乗るわけだが、そううまくは行かないようだ。

安倍総理は、「アベノミクスの効果をを津々浦々まで」と言い、新しい大臣枠に地方創出相を置くようだが、今のアベノミクスは大企業、富裕層向けの政策で低所得者向けの政策ではない。人口減少が見られる農村、山村、漁村までアベノミクスの効果を出そうとすれば相当無理なことをごり押しするしかないのではないか。

消費税10%で、社会保障以外に予算編成の余裕が出てくれば、自民党議員は皆飛びつくのではないか。

円安になっても国内需要は高まらない。生産施設は海外に移転済みで輸出は伸びない。中国、韓国市場も期待出来ない。

そこでクルーグマン教授が今週発売の週刊現代(2014.9.13)で斬新な提言をしている。

クルーグマン教授は、財政出動派でこういう時期に消費税増税は最もやってはいけない政策だというのだ。財政再建は後回しで成長戦略に徹せよとでも言い、8%への増税は本当に「しでかしてしまった」というのだ。

そして、もっとも手早く効果的な政策は「増税した消費税を一時的に減税にし、増税したことは気の迷いだったと一笑に付して、元の税率に戻せば良いこと」と言い切る。

消費税を5%に戻せというのだ。

クルーグマン教授は大胆なことを言うが、各国政府の指導者でクルーグマン教授の提言を採用した国はないそうだ。それでも一時はアベノミクスを評価していた。

私も急がず、消費税8%の影響が見えて落ち着くまで10%への増税は控えるべきではないかと思う。




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