2014年9月28日日曜日

リニア中央新幹線は、日本にとって必要な社会資本なのか

日テレ・ウェークアップ
2014.9.27
JR東海が計画している9兆円に上るリニア中央新幹線の建設は、社会資本としてなくてはならない新幹線構想なのか。927日の日テレ・ウェークアップを見ていて気になった。

そんな気にさせたのが、18日に肺炎で亡くなった偉大な経済学者である宇沢弘文先生の「経済学は人々を幸せに出来るか」を読んでいたからだ。宇沢先生はその風貌からマルクス経済学者と誤解していた。本当は、「人間の心を大切にする経済学」を目指し、「社会的共通資本は市場原理主義では守れない」と主張されている。

企業の自由をとことんまで追求して出来るだけ儲ける機会を作り出すフリードマンらの市場原理主義に異論を唱えているのだ。

テレビ番組日テレ・ウィークアップでJR東海のリニア中央新幹線の検証番組を見て、これからの日本の社会資本として必要なのかどうか疑問を感じたのだ。

当初は東京―名古屋、最終的には東京―大阪になるが建設費は東京―名古屋で5.5兆円、その後は京都を通らないコースで最終的には約9兆円になるという。ほとんどがトンネルの中で1kmあたり140億円の工事だ。

高い建設費と思うが、東海道新幹線の建設費が当時の国の一般会計の1割、リニア中央新幹線も今の国の一般会計の1割に当たる。何故か、そろえたような感じだ。

儲かるから作るのだろう。JR東海は黒字を試算しているようだが、これから人口減で利用者も減ってくるのに黒字は可笑しいと指摘する学識経験者もいる。しかも民間企業1社で9兆円の投資はバカげているというのだ。JR東海には新幹線を5兆円で譲り受けた残金がまだ2兆円以上残ってもいるのだ。

私もこの計画をどうかと思う。人口が多く利用者も期待出来る太平洋ベルト地帯ではなく、長野の山間部をほとんどがトンネルの中を通るのだ。観光で行きは新幹線、帰りは名古屋で降りてリニア新幹線に乗り換え話の種にするしかないのではないか。

課題も多い。

南アルプスの下をトンネルで通るとすると、破砕帯での異常出水も予想できる工事期間、工事費はどうなるのか。関西電力の黒四ダム建設工事での難工事を新聞で見ていたので心配になる。

消費電力だって新幹線の5倍、通過先の住民が心配している騒音、振動も予測が付かない。おまけに大量の残土をどうするか。

先日の新聞で残土の処理は解決出来そうだというが、どういうやり方をするのか。

宇沢先生の言う社会的共通資本とは、池上彰さんの「新装版に寄せて」を読むと、大気、森林、河川、土壌などの自然環境、道路や交通機関、上下水道、電力、ガスなどの社会基盤、そして教育、医療、司法、金融資本などの制度資本からなり、これらをうまく機能させることが大切なのだという(「経済学は人々を幸福に出来るか」 宇沢弘文 東洋経済 2013.11)。

工事や走行で自然環境、生活環境に悪影響はないか。今の新幹線料金に7001000円プラスしただけの料金の交通機関に魅力があるのか。将来の電力事情はどうなのか。

リニア中央新幹線が出来上がった頃には、状況がすっかり変わっていたことにならないのか。


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