2014年11月20日木曜日

安倍首相の解散声明全文を読んで:「この道」とはどこに通じる道なのか

安倍総理の18日の解散声明全文を新聞で読んでみた。「デフレ脱却」では「この道しかありません」、「この道しかないんです」そして「この道を前に進んでいく決意です」と「この道」を3回も使っている。

「この道」ってどんな道なのか。

強い日本を再生するには長い停滞したデフレ経済から抜け出すことである。今までも民主党政権を含めて各政権が挑んだ政策だが、脱デフレ宣言をする政権はなかった。菅政権でも脱デフレ宣言を検討したほどだ。

自民党が再び政権の座に着いた先の衆院選では、円高、株安からの脱出が大きな争点になった。自民党、民間エコノミストはインフレターゲット設定、マネタリーベースの増加を要求して選挙戦を戦った。市場に出回る通貨量を増やせば円安になる。円安になれば輸出産業は活気を取り戻すというのだ。

自民党安倍総裁(当時)は2%のインフレ目標、強力な金融政策を訴え、日銀総裁を更迭してまで推進し市場はその「期待感」に答え円高→円安、株安→株高に転換、安倍総理の経済政策、アベノミクスの第一の矢は当たった。

続く第2の矢で財政政策、第3の矢で成長戦略を放ち安倍総理の経済政策、アベノミクスの形を整えたが、日本の経済再生に立ちはだかる1000兆円を超える借金は「財政健全化」を無視できなくなってきた。G20など海外の会議、IMF,OECDからも財政再建の重要性が指摘された。

でも財政再建と財政出動は相反する政策だが、安倍政権は日本再生の車の両輪と訴えた。
国土強靱化を唱えて公共投資も増やすが、歳出削減はままならず社会保障費の削減、消費税増税しか対策は見当たらない状況が続く。

その唯一の消費税増税が再増税段階で景気の後退もあって、今回のように「消費税増税先延ばし」で国民に信を問う手に安倍総理は出た。アベノミクスでやっと脱デフレのチャンスが見えてきたのに、ここで再増税して脱デフレの芽を摘む結果になっては元も子もないと言うのだ。

安倍総理の言う「この道」とは「消費税再増税先送り」のことなのか。
それとも大胆な金融緩和、成長戦略、反対の多かった法人税下げ、岩盤規制緩和で強い経済を目指し、雇用や賃金を改善し「経済の好循環」を目指す道のことか。

安倍総理は18日に多くのテレビのニュース番組に出演し雇用の改善、賃金上昇を具体的な経済指数で説明していたが、雇用増も正規従業員ではなく、非正規従業員数の増加が目立ち、賃金のアップも大企業、都市部に偏っており全国津々浦々までは浸透していない。

経済界、労働界の集まりで更なる継続的な賃上げを要求していたが、経済界の思惑は違うようだ。

「この道」はどこに通じる道か。

脱デフレ→日本再生への道よりも円安→物価高→景気後退のスタフグレーションの道ではないのか。

米国のレーガン大統領が掲げた「減税による税収増」をレーガノミクスと称し日本でも出版物が出たほどだ。南カリフォルニア大のラファー教授がレストランのテーブルの上に置かれたフキンを見てラファー曲線(放物線の逆)を見いだし、その政策の根拠とした。

適正税率だと税収も最大になるが、それよりも高い税率だと税収も少ないので税率を下げると税収は増えるという考えだったと思う。しかし、今の税率が高いのか、低いのかがはっきりせず減税は効果がなかった。多くの経済学者がその不備を指摘したものだ。

そのレーガノミクスを真似して第一次安倍内閣の時に当時幹事長だった中川さんが命名し安倍総理の経済政策をアベノミクスとはやし立てたが、今回は各メデイアがこぞって大々的に宣伝したために「期待感」も大きかった。経済政策の多くは官僚の作成した政策で財務省寄りか経済産業省寄りかで内容も違ってくる。

今まで多くの政権は財務省寄りの政策を重視したが、安倍総理は経済産業省寄りの政策を採用、経済財政諮問会議など御用学者、民間エコノミストを重用する手に出た。

今のところ、甘利さんが言うように「失敗とは言えない」が、成功ともいえないのだ。

「代表なくして課税なし」なんて難しいことを言っていたが、納税は国民の義務だ。安倍総理が進めている経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢があるのかどうか、選挙戦を通じて明らかにしていくと安倍総理は言う。

与野党問わず、国民に分かりやすい争点を提案してほしいものだ。そして安倍総理のいう「この道」が正しいのか、間違っているのか審判しようではないか。


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