2015年1月6日火曜日

安倍政権が打ち出す経済政策:過去の政策を検証し、整合性されているのか

自民党仕事始めで安倍総理挨拶
テレビ朝日スクランブル 2015.1.6
安倍総理自ら「味わいのない」政策に「いい味」を付ける1年と言ったが、選挙選以降安倍政権はいろんな政策を打ち出しているが、過去の経済政策をよく検証し整合性された政策になっているのか。財務省の意向に反して消費税10%への増税を先送りしたのを良いことに、予定していた社会保障ができなくなったとして低所得者臨時給付金の減額などの政府方針が決まった。

育児、子育て、難病対策は予定通りのようだが、一部の人の介護保険料が減額されるが介護事業者への報酬は減額された。15年度では社会保障に1.8兆円当てる予定だったが先送りになり1.35兆円に留まったための優先順位をつけた予算化らしい。

ところで安倍政権の打ち出す政策は過去の経済政策を良く検証し整合性された内容になっているのか。

成長戦略で思い出すのは中曽根内閣での前川レポート、福田内閣での21世紀版前川レポートだ。内需拡大の必要性があった経済状況も今とは少し違っているが驚くことに同じ政策が今も繰り返し提言されているのだ。何故か、そしてその検証が出来ているのか。

過去の新聞の記事を検索すると中曽根さんは会議に出席していたが、福田さんは一度も会議には出席しなかったが洞爺湖サミットで高々と政策を打ち出した。

この前川レポート、21世紀版前川レポートがうまく行かなかった理由に「企業の儲けを家計に再配分するシステム」の構築がなかったことが上げられていた。それも意識してのことかどうかは分からないが、安倍総理は「賃上げ要求」に御執心だ。

安倍政権はトリクルダウンに期待していた。円安、株高、成長戦略で企業が儲かればその恩恵が私たちにも落ちてくる。賃上げという形での家計収入の増加だ。賃上げが出来れば個人消費も増加し、経済の好循環でインフレに持って行き日本再生に必要な「脱デフレ」が達成出来るとみたのだ。

ところが、消費税増税、生活必需品の値上がりなどで実質成長率もマイナス成長が続く。大企業による賃上げも一部に留まり効果が波及しない。安倍総理は経済界に今春闘の「賃上げ」を要求、企業はどうこたえるのか。

アベノミクスに期待したが金融資産1億円以上の富裕世帯は101万世帯(2013年)、一方相対的貧困率は16%で格差は拡大する一方だ。

円安、株高で企業儲けはどうなっているのか。麻生財務相が信託協会の賀詞交換会で、企業の内部留保は304兆円から328兆円になり、2014年9月末で毎月2兆円の増加だといい、「単なる守銭奴ではないか」と発言したニュースが流れた。この間まで280兆円と思っていたら、設備投資もせず、賃上げもせず月に2兆円も積み増ししているのだ。

内部留保に課税してはき出させろという意見が出ているのも理解出来る。

安倍政権やヨイショするエコノミストは「アベノミクスの成果」を誇張するが、アベノミクスの成果としては、第一の矢の当初の金融政策だけではなかったか。しかも日銀の仕事だ。

海外ファンドは儲け口として日本の株価に照準を当て、株高へと転換した。これに気をよくした安倍総理は「アベノミクスの評価は株価」と言い出した。確かに株価は17000万円台まで上がったが、アベノミクスの成果ではない。

米国経済の好調、不調に大きく影響され、欧州経済も影響する。ギリシャの財政危機再燃、原油価格の下落、欧州経済のデフレ? 中国のバブル崩壊の危険など日本経済よりも海外の経済情勢が大きく影響している。当然だろう、海外投資家の割合が70%なのだ。

その株価も6日、400円安の17000円割れで午前の部を終わった。米国の株価の下落の影響を受けての東証株価の下落だ。

又、日銀は2%物価目標を掲げて目標達成の最終年度になった。民間エコノミストの予想に反して日銀は2%達成に強気だが消費の落ち込み、原油の下落などで可能性は低い。そうなると黒田総裁、岩田副総裁は責任を取って辞任だろう。就任時に約束したのだから。

市場は更なる追加緩和を見込んでいるが、市場にジャブジャブカネを流してどうなるのか。万一インフレになったところで予期せぬインフレの危険はないのか。

国会審議で2%達成の定義が議論になった事がある。野党議員は「2%達成の可能性が出て来た時点か」と問うたが日銀は「安定的に2%が確保できたとき」という。どうも2%という数字を越えることが大事らしい。

でも、一度インフレになると制御出来なくなる恐れもあるのだ。日銀の金融政策の手段は金利の上げ下げだ。今、ゼロ金利下にあり量的緩和政策で物価に効果があるのか。

FRBは金融政策の正常化を目指して利上げのタイミングを計っている。日銀が出口戦略に言及したとき、日本経済はどうなるか。

混乱を最小限にするために市場との会話が必要だが、日銀は時期尚早とみているようだ。そして、最近消費税10%増税で政府と日銀の考え方に違いが出て来た。黒田総裁は10%への増税で景気が遅滞するのを避けるため追加緩和を実施し市場は驚いたが、安倍総理は増税先送りを決定し解散・総選挙で信を問うことになった。政府と日銀のチグハグさは官邸と財務省のチグハグさを反映していた。今後の金融政策にどんな影響が残るか。

成長戦略も経済界から更なる規制緩和が要求されている。甘利経済再生相も「深層ニュース」で「成長戦略の具体化が見える年にしないといけない」と意欲を示した(読売新聞2015.1.6)。

でも先にも言ったように今提言されている成長戦略のほとんどが福田内閣時代の21世紀版前川レポートと内容を同じくしているように見える。何故、成果が出なかったのか検証したのか。そして今度はどうして成果が期待出来るのか。

規制改革では自民党族議員、既得権益者の抵抗が強い。安倍総理は本当に岩盤規制へのドリルの刃となるのか。農協改革も自民党票田でもあり注目だ。

一方、うまく行ったと思える株高、円安は大企業、富裕層を豊かにするが税の見直しも相まって不平等、格差の拡大が国民の不満を掻き立て政権を不安定にする危険もある。

安倍総理は「味わいのない」政策に「いい味」をどう付けるか、今までの経済政策の検証と整合性が要求される。

6日のニュースでは15年度予算額は過去最高の96兆円で税収は54兆円を予定、赤字国債の発行は41兆円から37兆円に減らせるらしい。

それでも安倍政権の看板政策は推進するのだ。国土強靱化では整備新幹線、八ッ場ダム推進、スーパー堤防、巨大防潮堤、農業分野では農地バンク、就業給付金、女性活動ではマザーハローワーク事業拡大、東京五輪、外交では在外公館強化で地球儀外交を推進するようだ。安倍政権が政策を打ち出せば予算が必要になり太るのは官僚だけだ。

カネがないから弱い分野の予算を削るが、利権がらみの分野には相変わらずカネを垂れ流す。国と地方の借金は1000兆円を超え、対GDP比は230%にもなった。海外ファンドは赤字国債の日銀引き受けに懸念を示しだした。何時日本売りに走り出すか。市場だって日本が破滅することを願ってはいないだろう。


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