2015年2月21日土曜日

それでも2%物価目標へ:日銀は闇雲に量的緩和を続けるのか

経済の舵取りが注目される日銀本店
黒田総裁、岩田副総裁が約束した2年で2%物価目標達成も怪しくなってきたが、それでも日銀は闇雲に量的緩和を続けると言うのか。そんなに市場におカネを流してどうなるのだ。供給過剰では物価は上がらないのが経済学の常識だったが国内需要を喚起するために日銀の量的・質的金融緩和は成果を出しているのか。

2014年10~12月期のGDPは名目1.1%増、実質0.6%増で年換算2.2%増と言うことだが、その要因は海外需要、輸出が好調だったためで国内需要は個人消費0.3%増、設備投資0.1%増で伸び悩みのようだ。

でも、名目が実質を上回ると言うことは物価上昇が続いていることらしい。

景気が回復すれば消費は伸び、企業も賃上げして物価上昇する好循環が期待出来るが、今原油安が経済にインパクトを与えようとしている。原油安はガソリンなどエネルギーの価格下落で家計にとっては負担軽減に役立ち消費増も期待出来るが、一方で物価上昇を押し下げる要因にもなりデフレ脱却が遅れ2%物価目標の達成も覚束なくなり、更なる日銀の追加緩和が見え隠れする。

今の物価上昇を円安による輸入材料などの高騰による物価高で、需要増にともなう賃上げでの家計所得の増加に伴うものではない。経済の悪循環と見えるが日銀は闇雲に2%物価目標を目指すように思う。

日銀は今の日本経済をどう評価しているのか。

日銀の「当面の金融政策運営について」(2015.1.21)によると景気は基調的には緩やかに回復を続け、物価面では0%台後半となり、予想物価上昇率(2%)はやや長い目で見れば全体として上昇、消費者物価の前年比はエネルギー価格下落でプラス幅は縮小すると見ている。

だから成長率は2014年下ぶれ、2015,2016年は共に上振れ、消費者物価は2015年下振れ、2016年は概ね不変と見る。

そこで今後の政策は、安定的に持続するために「量的・質的金融緩和」を継続すると言うのだ。

FRBは既に量的緩和政策を打ち切って、正常な金融政策を目指し利上げのタイミングを図っている。米国が利上げに踏み切れば日本経済も大きな影響を受け、その動向が懸念されている。雇用など指標は改善しているが問題はその内容で詳細な検証が求められているようだ。

日本もアベノミクスで成果は出ていると安倍政権は聲髙に言うが肝心なのはその指標の内容だ。一見改善しているように見えても内容に格差が出ていれば政策としては失敗だ。

本当に日銀の量的緩和の成果が出ているのか。

思えば、2012年の衆院選で当時野党だった自民党は「円高は市場に流れる円の量が少ないからで量を増やせば円安になる」とわかりやすいフレーズで民主党。野田政権を揺さぶった。

当時の野党・自民党の安倍総裁は「インフレターゲット設定、マネタリーベース増」を訴え市場は好感し、民主党は政権の座を降ろされた。

しかし、野田政権の時もインフレターゲットの設定、マネタリベース増を日銀に突きつけていたが、白川総裁は「ウン」と言わなかった。その後、日銀法改正、総裁人事にまで話が及んで日銀は政権の意向をくまざるを得なかった。リフレ派の勝利だった。

新たに日銀総裁の座に着いた黒田さんは「2%物価目標、2年で2倍のマネタリーベース増」を約束し市場は円安、株高に動いたが、全てがアベノミクスの効果だとは言えないようだ。

つまり資金需要を見ると野田政権が解散を決めた頃、銀行の貸し出し残高は前年比でプラスになり、すでに資金需要は回復傾向にあったことになりアベノミクスの効果だけとは言えないという説もある。

でも金融緩和は金利の低下で金融機関の貸し出しを増加させ企業の資金需要を増やすことにあるのだが実体経済への資金需要はどうなのか。

日銀は金融機関から国債などを買い入れているが、そのおカネは日銀の銀行口座に貯め込まれているというニュースもあった。この金利が非常に高いので危険な目に遭って企業に貸し付けるよりも安全だというのだ。

銀行の預金、貸出の状況がどうなっているのか。銀行の貸し出しが伸びないのは国内需要がないからではないか。だとすると企業の国内投資の増加策に工夫が要るのだが家計所得の増加を目指す賃上げが先か、経済成長が先かの議論になる。

それでも量的緩和を要求する声は強い。

IMFは物価上昇率が上がる兆しがないからもっと量的緩和を拡大し投資や消費を喚起しろと言い、日本の成長率を0.8%から0.6%へ下方修正した。

エコノミストも市場関係者も日銀の量的緩和の拡大に期待を寄せる。日銀の国会同意人事の新たな審議委員にリフレ派が選ばれ政権の姿勢を示した。

ところが安倍総理の無責任さもさらけ出した。国会審議で日銀の量的緩和を質問されたとき、人事ではリフレ派を登用しながら「量的緩和の終了は日銀に任せている」と言及を避けたのだ。

勿論、政権トップが金融政策について言及することは市場に予断を許すことになりやってはならないと思うが自らの経済政策「アベノミクス」の「第一の矢」が金融政策だ。量的緩和の終了が何時になるか分からないが、その時の経済の混乱を最小限に抑えるためにも市場との対話は重要だ。

日銀の量的緩和拡大の「期待感」は企業への資金需要増大、投資への貸し出し増で景気回復につなげようというもくろみがあるが国内需要の拡大は量的緩和だけでは難しい。

プリンストン大からニューヨーク州立大に移ったクルーグマン教授が面白いことを言っている。「消費税を5%に戻せ」というのだ。減税することによって可処分所得が増え消費増につながる。これに日銀の追加緩和が加われば「期待感」も高まり景気は拡大するというのだ(FRIDAY 2015.3.6)。

クルーグマン教授は、この時期に財政健全化、増税なんてとんでもない、財政出動で景気を刺激しろという。教授は各国の政権に同じようなアドバイスをしているが教授のアドバイスを聞いた政権はないという。実際に国民の生活に責任を持っている政権と何でも謂える経済学者との違いだろうが、教授のアドバイスに従わなかったが2年で景気が回復したと言う例もあるらしい。

5%に戻すことはないだろうだろう。寧ろ1年後には10%への増税が約束されているのだ。

また日銀と政権との間に溝が出来てきた感がする。黒田総裁は10%への増税で景気の下振れ防止に80兆円に追加緩和を発表したが安倍政権は10%への増税を見送った。

景気拡大に非伝統的金融政策、毒薬と言われる金融政策「量的緩和」に頼りすぎず内需拡大で政策を打ち出さなければならないが本当に需要がないのか、企業家の意識改革が必要なのか。

経団連など経済界は「おねだりばかり」でなく、自ら切り開いていく努力が必要なのではないか。15年間のデフレに慣れっこになっているのは経済界なのではないか。


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2014.11.1掲載
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