2015年2月27日金曜日

大丈夫か財政健全化:経済財政諮問会議で黒田発言封印、政権と日銀に不協和音?

大丈夫か財政健全化、政権と日銀に不協和音が見えてきた。先に10%消費税増税に際して景気の下支えを見越して日銀が追加緩和を実施したが安倍総理は増税を先送りし、黒田総裁は肩すかしを食らった。そして経済財政諮問会議で黒田総裁が「日本国債はリスクになり得る」と発言したことが議事録から削除して発表された。

ANN,FNNのニュースによると、12日実施の経済財政諮問会議で経済再生、財政健全化について議論されたとき、黒田総裁が「民間格付け会社が格付けを引き下げたことで安全資産とされている日本国債を持っていることがリスクになる」と国債を保有する日本の銀行の経営への影響を懸念し極めてリスクになると指摘したそうだ。

ヨーロッパでは国債をリスク資産と見なし、銀行への規制を強化する議論が始まっているというのだ。

これに対して、政権側がこの黒田発言を削除して議事録を公表した。封印したことになるのだ。

予算編成で赤字を賄うために国債を発行するが、それを際限なく買い入れる異次元の金融緩和を黒田日銀は拡大しているが専門家の間では「財政ファイナンス」の疑いも出、日銀の政策決定会合でもそういう意見が出ていた。ここに来て黒田総裁が政権にクレームを付けたが、安倍政権は「黒田発言」を封じた格好だ。

確かに、12日の議事録を見ると黒田総裁は、基礎的財政収支を「2020年までに黒字化」する財政健全化目標の達成に向け具体的な計画策定をしていくことが重要で政府による健全化に向けた取り組みに期待する」というだけの内容になっている。

この発言は黒田総裁がことあるごとに言っていることで、何ら目新しい内容ではない。

日本国債の下落の心配は以前からも指摘されていたことで、国会審議でも野党議員が日銀に「下落した場合の影響は」との質問に1%下落で銀行では確か6兆円の損失(具体的な数字は忘れた)が出ると応えていた。

日銀だって60~70%(?)を保有している国債の下落は影響が大きい。日銀は特別な会計をやっているとか、政府と一体だから倒産することはないと言われているが、経済財政諮問会議で「日銀の経営も注視すべきだ」との意見も出ていたはずだ。
国債の大量発行→長期金利上昇→財政危機と見られ欧州経済危機の時も言われていたが、金利上昇は海外からカネを集めることもできなくなり国内経済は破綻するのだ。

ところが日本の場合は、国債の格下げがあっても国際価格に動きはなく、長期金利も低いままだ。経済の理屈どおりに市場が動かないのだ。

朝日新聞(2015.2.27)の経済気象台「失われた市場のシグナル」で、「市場で的確なシグナルが出ないのは、日本銀行の異次元の金融緩和の効果による」というのだ。国債市場は外部からの錯乱が大きすぎて市場の機能が失われて不健全な状況にあるという。市場が再び機能するようになるのは量的緩和が縮小し金利が上昇を始める時だという。

この見方に同感だ。その時は日本経済は混乱し、安倍総理のアベノミクスなどぶっ飛んでしまうだろう。

安倍総理は民主党政権下で苦しんだ円高、株安に異次元の金融政策で挑んだ。慎重派の白川総裁に替えリフレ派の黒田総裁をもってきた。

野田政権でもインフレターゲット、マネタリーベース増の動きはあったが、黒田総裁で「2%物価目標、2年で2倍のマネタリーベース増」を訴えて「その期待感」から円安、株高に基調が変わった。

2年後の今、FRBは非伝統的金融政策、毒薬とも言われた量的緩和を終了し、正常な金融政策を目指し6月以降にも利上げのタイミングを狙っている。一方で日銀は量的緩和の追加に走った。

国会でも量的緩和の縮小「出口戦略」の話が持ち上がった。野党議員が安倍総理に質問した時、安倍総理は「専門家に任せている」と答弁を避けた。

日銀人事に口を出し量的緩和の花火を大々的に打ち上げ、アベノミクスの成果とうそぶきながら「その後のことは知らぬ」ではあまりにも無責任すぎないか。

むしろ、それが安倍総理の能力の限界なのだ。

そもそも財政健全化の前提である「国と地方の借金1000兆円超え、対GDP比230%」の本当の姿はどうなのか。

先進国一悪い財政状況に見えるが、資産もあり純債務は今の借金の半分ぐらいだと言う人もいれば、赤字国債のほとんどを国内で消化しているから心配ないという一方で、こんな状態が長くは続かないともいう。

財政健全化は広く国民に負担を強いることになり緊縮財政は国民受けしないことはギリシャの総選挙からもわかる。ドイツもゼロ借金財政を続けているがインフラには疲弊も目立ち緊縮財政の賛否は半々だ。

我が国も社会保障費などで国民に負担を強いている一方で、族議員、既得権益者向けの公共投資も増えているし、インフラの維持管理にもカネはかかる。巨大地震対策でのインフラ整備も必要だ。だとしたら維新の党が言うように「自ら身を削る」ことから始めなくてはいけない。

国会審議も「日本の財政の本当の姿」をもっと議論するべきだ。財務省の言いなりでは消費税増税路線しかない。幸いにも安倍総理は財務相経験者ではない。

安倍政権と財務省、日銀が考えの相違があっては財政再建など覚束ないのだ。

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