2015年6月5日金曜日

財政健全化へ、官邸vs財務省:経済成長への期待度と歳入・歳出改革の違いか

経済財政諮問会議で民間議員提案
の「計画のフレームについて」
2020年度でのPB黒字化に向け官邸と財務省の計画のフレームの違いが1日の経済財政諮問会議で明るみになった。内容は官邸主導の経済財政諮問会議と財務省主導の財務制度等審議会の提案の違いは経済成長への期待度の違いと歳入・歳出改革の考え方の違いだ。

新聞報道によると経済財政諮問会議の3%名目、2%実質成長率への期待は甘すぎると財政制度等審議会が批判したようだが経済成長による税収増に頼ることに違いはない。さらに歳入・歳出改革をいつから始めるかの違いはあるようだ。

この違いは官邸VS財務省の構図になっている。平成27年度第8回経済財政諮問会議大臣記者会見の要旨(2015.6.1)を見ると「経済再生なくして財政健全化なし」を基本に税収増の確保を前提にすべきだというのだ。

この経済財政諮問会議に財務相の諮問機関である財政制度等審議会の「財政健全化計画などに関する建議の概要」を麻生財務相が提出したのだ。

経済財政諮問会議に提案された財政制度
審議会の「財政健全化計画などに
関する建議の概要」
財政制度等審議会が経済財政諮問会議の財政健全化で前提とする「名目3%、実質2%経済成長」を甘すぎると批判するが経済成長による税収増を否定しているわけではない。実際に14年度税収も51兆円を超え、財務省は予算編成で1.7兆円増を見込んでいるほどだ。

でも政府が目指そうとする名目3%、実質2%の成長率の達成を可能と見るエコノミストはいない。OECDの経済成長率の見通しでも2015年は前年比0.7,2016年は前年比1.4%で個人消費の回復、円安による輸出の好調を見込んでのことだが実質2%にはほど遠い(読売新聞 2015.6.4)。

どちらにしても2020年にPB黒字化には9.4兆円の赤字をどう解消するかがポイントになる。

それぞれがここを工夫しているのだが、歳出削減改革が重要になるのだ。経済財政諮問会議の民間議員は歳出削減に力を入れながらも税収増に期待が大きい。だから行き過ぎた歳出削減は税収増を妨げるといい2015年から改革に着手し、2018までを改革集中期間とするという。

一方、財政制度審議会は経済成長による税収増に大きな期待は寄せず、歳出改革で収支の改善に何とか対応しようとする。だから今から厳しい歳出削減になるのだ。当然に税収増を歳出増にはさせないともいう。

経済成長に対してどちらの考えが正しいのか。過度な期待は禁物であるし、17年には10%への増税が予定されている。今度は景気条項もないので10%へ上げるしかないようだが、また景気の腰砕けがないだろうか。8%への増税時は個人消費の低迷を招いた。

増税しても景気への影響は少ないと言ったのは経済財政諮問会議の議員達ではなかったか。でも経済学では増税は景気に影響すると習ったはずだ。

ところで、歳出改革についてそれぞれが考え方、方向性を提案している。

経済財政諮問会議は、名目3%、実質2%の経済成長を達成するにも歳出・歳入改革が必要であると言う。政策の効率を上げて2018年までを歳出改革集中期間とし、2016年には診療報酬などの改定で医療制度改革をし、2017年には消費税増税を控え民需主導で持続的な経済成長を支えるという。また民間議員らしくPDCAサイクルを回して改革をより具体化するという。

2018年度は(歳出-歳入)/GDP比をマイナス1%程度にし、仮に目安に到達していない場合には、歳出面、歳入面において取るべき措置を検討しながら2020年度に黒字化を目指す。歳出・歳入改革で分子を小さくし、経済成長でGDPを増やせば目標達成は可能らしい。

一方、財政制度等審議会は税収増で収支改善するために歳出改革を進める。2016年からは歳出水準を設け過去3年間の歳出増加ペース以上に増えないようにするという。そして歳出分野の具体的方策を積み上げ財政健全化の実効性を高めるのだ。社会保障費の伸びを5000億円の範囲内に抑制、社会保障以外の経費も人口減を踏まえて増加を前提とはしない。

地方財政も歳出改革に取り組み地方一般財源総額について水準の見直しをする。そして2018年度に進捗状況を評価検証すると言うのだ。

安倍政権の経済の舵取りは官邸主導の経済財政諮問会議で決め、予算などでは財務省が編成する。私たちの生活は経済財政諮問会議の4人の民間議員に牛耳られているようだがそれで良いのか。

経済財政諮問会議を監視するのは誰なのか。

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