2015年9月20日日曜日

「違憲疑い」の安保関連法:時の政権は自信を持って運用できるのか

違憲の疑いが強く、小林先生は違憲提訴を目論んでいる安保関連法を時の政権が自信を持って運用できるのか。執着した安倍政権が今後も長く続くわけではない。超保守の安倍総理はチャンスがあれば適用するだろうがリベラル系の総理ではどうだろうか。政権によって運用が変わればそれこそ「法的安定性」に欠けることになる。

安倍総理は法案成立後「今後も丁寧に説明していく」と言うが成立してから言うことではないだろう。丁寧に説明し国民の理解が深まって始めて賛否を問うのが常道だ。

結局は、米国の親日家達が日米同盟に危惧を感じ作成した「一流国」を維持したかったら我々の提言を聞けというアーミテージ・ナイ レポート、安倍総理の「日本を世界の中心に」という政策、そしてオバマ大統領と交わした「今夏までに成立」の約束を守るために国民を犠牲にしての強行採決、成立となった。

鴻池・参院特別委員会委員長も強行裁決後に政府答弁に苦言を呈していたし、浜田・衆院特別委員会委員長も「10本の法案を1本に統括し提出したことはいかがな物か」と言っていたこととも合わせ政権側の杜撰さは隠しようがなかった。

そのため想定する事態はくるくる変わり当初の想定と違うことになり「机上の空論」だった。結局のところは「新3要件に照らして総合的に政府が判断する」という縛りの効かない内容になっている。

今後米軍がどういう支援を要請してくるかだが、その時に新しい事態が分かってくるのだ。

今回の安保関連法の制定に当たって海外の評価は中国を除き「歓迎」のエールだ。しかしこれほど荒れた国会審議を見ていると米国だって「安易に支援要請」は出来ないだろう。

政府は安全な後方支援を主張するが、後方支援は戦争では兵站だ。戦争の勝敗は兵站にかかっていることは第二次世界大戦で分かったことだ。後方支援を叩くことが戦争勝利の鉄則なのだ。

戦争を知らない連中が安保関連法を作っていると批判があったがそのとおりだ。

ところで裁判所に「違憲提訴」して最高裁の判断を仰ぐことが出来るのか。

高村さんは「違憲審査権」は最高裁にあり憲法学者ではないと「砂川判決」を合憲の根拠に上げていたが、砂川判決は集団的自衛権について言及していないと言うのが裁判官の一致した見方だ。

でもこの最高裁判所の法令審査権に関して最高裁の重要な判例がある。

具体的事件を離れて抽象的に法律、命令などが憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない(最判大・昭27.10.8)。

安保条約のごとき、主権国としての我が国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない性質のもので有り、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解する(最判大 昭34.12.16 いずれも判例付き六法全書 金園社による)。

損害が具体的に出ていない場合とか、条約のようなものは最高裁での法令審査権はないと言うのだ。

しかし、一見極めて明白な違憲が認めらえる場合は例外らしい。だとすると今回の安保関連法案は正式な憲法改正手続きを経ず、閣議で解釈改憲を決定し、衆参両院での特別委員会で乱闘の末の強行採決で採決結果が分からない状況だったことを考えると明らかに違憲の疑いがあるのではないか。

こんな状況下でも審査権を否定する最高裁に司法の独立などあり得ない。最終的には合憲か違憲かの判断は国民に委ねられている。

参院選、衆院選で護憲、立憲主義尊重の国会へ再構築すべきなのだ。


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