2015年9月9日水曜日

アベノミクスの第2ステージ:政府が笛吹き企業を踊らせ需要を喚起できるか

安倍総理は「アベノミクスはまだ道半ば」と言いこれから3年を「アベノミクスの第2ステージ」にするという。「笛吹けど企業踊らず」で当初の成果はあったとしても異次元の量的緩和、成長戦略、法人税下げなどで企業を踊らせ供給過剰から需要喚起できる策があるのか。

経済成長→企業収益増→家計収入増→消費増→税収増→財政再建の経済の好循環を導くにも日本経済(勿論世界経済も同様)の供給過剰の状態では無理で如何に需要を作り出すかが重要だ。

これからは期待感を煽るのではなく、実体経済を直視し政策の調整が必要になってくるのではないか。

アベノミクスも既に色あせてきた。リフレ派が主導する異次元の金融緩和は市場に多量のカネを流通させ、長い期間、円高、株安に苦しめられた日本にとって新たな展開に答え念願の円安、株高に動いた。これで安倍政権は確固たる地盤を築くことができたのは確かだ。

ところが円安はドンドンすすみ110円から120円台に。輸出企業は大儲け出来たが、今度は輸入品の値上がりも相まって国内に物価高を招いた。消費税増税もあって個人消費は落ち込み景気下支えのために日銀は追加緩和に出た。市場に流すカネは320兆円(?)にもなる。

日銀が市中銀行から買い上げた国債の代金は日銀の当座預金残高になり、それに比例して市中銀行は企業に融資することになるらしいが、当座預金残高が増える一方で融資に回らないという。経済財政諮問会議でも麻生財務相が「そこが問題だ」と指摘し民間議員が「今度その点も議論しましょう」と提案していたが、どうなったことか。

日銀が国債を買い上げるので国債の価格は維持でき、長期金利も低水準を保てるが企業が資金を借りて設備投資などに回さない。企業の内部留保の300兆円ぐらいはあるので自己資金で投資しようと思えばできるが、何しろ需要がないので投資できないのだ。

そこでアベノミクスの政策として将来ビジョンを示し投資を誘うことが大事なのだが成長戦略もパッとしない。今までも各政権で成長戦略を出しているが族議員、企業、官僚等の既得権益者の抵抗、岩盤規制が強くのしかかり選挙を考えると腰が引けるのだ。

中曽根内閣時の前川レポート、福田内閣時の21世紀版前川レポートも内需拡大による成長戦略を提案していたが、企業の儲けを再配分することに企業が反対したために挫折したという。

国内の内需拡大より輸出が手っ取り早いのだ。

経済成長率2年で2%の達成に自信(?)を持っているのは日銀ぐらいで民間エコノミストは16年度前半の達成は難しいとみる。そもそも何故2%だったのか。民主党の前原さんが以前、予算委員会で安倍総理に「2%の根拠」を質問した時、安倍総理は「専門家は2,3,4%と言っているが、達成の可能性を考えて2%にした」と応えていたが,前原さんは「その程度の根拠なのか」とあきれていた。

達成不可能でも日銀の立場としては2%への期待を言い続けなければならないのだ。しかし政府も実体経済を直視し方針を転換していくことも必要になってくる。G20、G8では常に共同声明に上げられる成長率目標なのだ。

ところで異次元の量的・質的金融緩和をいつまで続けていくのか。ギリシャの経済危機が一応去り、今度は中国の経済危機が世界の株価を大きく変動させている。この時期にFRBが何時利上げに踏み切るかが注目される。

異次元の量的・質的金融緩和も安倍総理が強く押し、日銀総裁を更迭してまで踏み切ったが行き過ぎた量的緩和はかえって問題であることは皆認識している。

ゼロ金利下での量的緩和は効果が薄い(期待出来ない)ことは多くの経済学者が指摘していたことだ。

FRBが金融政策正常化に向け利上げを検討している最中にも日銀は量的緩和を継続している。成長率が鈍っているようにみると市場は追加緩和で景気の下支えを期待する。日銀も「その時はやるぞ」と市場に期待を持たせる。マネタリベース増も目標の270兆円を超え、300兆円も越えていると言われている。

日本は何時緩和縮小に向かうのか。昨年だったか、衆議院予算委員会で野党議員が安倍総理に「何時緩和を縮小するのか」と質問したとき安倍総理は「専門家に任せている」と逃げた。

量的緩和を始めるときは強く意向を述べたが、止めるタイミングについては言及を避けるなんて無責任ではないか。勿論日銀の仕事だが量的緩和縮小は、あらゆる面で難しい問題を抱えている。政府の経済、財政政策で大きく関連するのだ。

国の借金を日銀が引き受けている財政ファイナンスと見られたり、日銀の国債買い上げを止めれば日本国債は下落し、長期金利は高水準になり企業はカネを借りにくくなり経済は低迷するとみている。

赤字国債の発行が出来なくなるから予算編成は余裕がなくなる。社会保障費、公共事業は削られる。成長戦略もままならず、国の借金は1050兆円、対GDP比は200%を越える先進国一悪い状況は更に悪化し経済再生は難しい。

国債を多量に保有する日銀、市中銀行の経営は苦しくなる。

量的緩和は劇薬、一時の時間稼ぎと言われている。政府ももっと実体経済を直視すべきだ。

アベノミクスの第2ステージは津々浦々まで困難を国民に強いることになりかねない。


そうなる前に、経済同友会の代表幹事が言っているように「政府にばかり頼らず、今度は企業の出番なのだ」。需要喚起は企業の責任だ。経団連のように政府におねだりばかりしていては経済再生は覚束ない。


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