2015年11月1日日曜日

内需拡大へのイノベーション:国民生活に影響を与える事業のネタがあるのか

内需不足が経済停滞の要因になっており、イノベーションによる内需拡大が喫緊の課題だが経営者に国民生活に影響を与える事業ネタがあるのか。アベノミクスの成果(?)で円安になり企業収益も改善したが、企業の内部留保は256兆円、預金も200兆円超にもかかわらず設備投資は伸びない。

更に世界一企業活動のしやすい環境を作ると法人税下げなど企業優遇策も打ち出すが、海外へ向かった生産設備はなかなか戻ってこない。関連企業を含めて海外市場に向けての投資だったから戻ってくることなど考えられない。

そこで国内で新しい事業を展開する必要があるのだ。

政府も学者もエコノミストもことある毎にイノベーションの必要性を説く。日銀は長期金利の低水準を維持する金融政策に打って出るが経営者は「新規需要があれば借金してでも投資する」と豪語する。

GDPは国内で創出される物とサービスの額の総計だが「物づくり」に停滞感がある。日本は「物づくり」が命だ。品質、生産効率では世界に引けを取らない。

でも、総務省が発表した9月の製造業の就業者数は1000万人を割り992万人になり、更に2030年には70万人が減るという衝撃的な報告書をだした。厚生労働相は「内部留保を積み上げるのではなく設備投資で雇用を作れ」という(朝日新聞2015.10.31)。

一方、雇用増が見込まれるのは医療、福祉分野で就業者数は34満員増えて788万人と言うが3K職場で賃金も安い。専門家は需要の高さが賃金に反映していないという(同上)。

政府も成長産業分野に医療、介護、福祉関係を上げているが新しい医療技術、介護ロボットなどイノベーションも見られるが、この分野は全て税金で成り立っている。社会保障費の増加は財政再建にも絡む。事業で収益を上げ拡大していく分野にはほど遠い。

一方で、サービス分野はどうだろう。新しい技術開発でIT産業は拡大している。中国経済も物づくりは破綻していると言われるがIT産業の好調に支えられているようだ。

サービス産業は昔から賃金は安く労働は過酷といわれ、サービス業への就業者数が多いのも歓迎すべきかどうか。
新規事業開発で思い出すのはヤマト運輸の宅配便事業だ。ヤマト運輸は三越の宅配を引き受けていたが、ある時三越の社長(岡田さん)が「宅配業者からも駐車料金を取れ」と言った為に、当時の社長であった小倉さんが、三越の宅配から手をひきノー・ハウのあった宅配業を運送会社として全国展開することを考えた。

しかし、運送業としての厳しい規制が有り新規事業の参入に運輸省が抵抗したが、根気よく交渉し規制を取り除き「宅急便」事業を興した。開業当日は11個の荷物だったが、今は宅配便なしに国民生活は成り立たない事業に発展した。

新規事業開発事例として以前は必ず上げられた事業だが、今は競争激化、過剰サービスが事業継続の上でネックになってきたようだ。

今、産業界は規制緩和を要求するが、どんな規制を緩和すればどんな事業が生まれてくるのか、全く想像が付かない。具体的に事業開発をやりたいのであればネックとなる規制を緩和する動きがあっても良いと思うのだが、やる気はないが唯言っているだけなのか。

1日のTBSテレビ「夢の扉」に人工クモ糸を開発したスパイバー(株)の関山さんの開発物語が放映されていた。脱石油に執念を燃やす関山さんの成功物語だ。よく見ると大学時代に45人の教授の前で構想を発表した時、「そんな事で卒業は出来ないよ」と批判された中で1人の教授が「良いじゃないですか」と賛意を示しことが研究開発に弾みを付けたという。


こう言う賛同してくれる味方が政府や官僚にいることを望むだけだが、その前に、新規事業に向け意欲を持つ企業家が出てくることを祈るばかりだ。

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