2015年11月7日土曜日

「より良い生活」を求めて:企業はどう責任を果たすのか、マーケテイングの役割は

今、考えられる「より良い生活」とはどんな生活なのか。経済停滞の要因は「需要がない」と言うことに尽きるようだが、企業の責任とともに、そこにマーケテイングが役立つというのか。101314日に開催された「ワールド マーケテイング ジャパン 2015」の関連記事が読売新聞(2015.11.6)に「より良い生活」提案で掲載された。

基調講演をした米・ノースウェスタン大のコトラー教授は資本主義経済を維持するには十分な需要を作ることが必要で、ここにマーケテイングの役割があると言う。「より良い生活」をしたいという需要を生むマーケテイングが資本主義経済の原動力ともいう

今資本主義は問題に直面している。大企業や富裕層が豊かになれば経済が活性化し、中小企業や貧困層まで恩恵が及ぶというトリクルダウン効果は見たことがないと言い、企業がきちんと賃金を払い、労働者にしっかり働いてもらうことだともいう。

アベノミクスが狙っていたのもトリクルダウン効果だったが、うまく行かないとみて今「官民対話」で経済界に賃上げ要求しているし、最近日銀・黒田総裁も会見で「賃上げ」を要求する。日銀の目指す「2年で2%物価目標」も達成時期を先延ばしするも消費者物価上昇は何か秘策がない限り無理とみられている。

また、政府は内需拡大に向け政策を打ち出すも企業家は踊らず、内部留保は356兆円、企業の預金も200兆円を越えたという。企業の姿勢に変化がなければ意味がない(麻生財務相)のは当然だが、安倍総理は「賃上げ」を経済界に要求した。企業の儲けを家計に再配分することの難しさは中曽根内閣時代の前川レポート、福田内閣時代の21世紀版前川レポートでも証明された格好になっているのだ。

政府は設備投資しろと言っても企業家は「需要がなければ無理な話」と思っているし、賃金を上げろと言ってもそれは労使関係で解決すべきことと反論する。経団連は参加企業に協力を依頼するというが、「規制緩和を進めろ」と度毎に要求する。

政府は異次元の金融緩和で市場にカネを流し、低金利を維持しているし、法人実効税率も最近では30%を切りたいと設備投資には有利な環境下にあるが、企業家にとっては「需要があれば借金してでも設備投資はする」と豪語する。

そこでマーケテイングが重要になると言うのだ。昔のマーケテイングでは「どんな商品をどう売るか」だったと思うが、コトラー教授は「自社の事業とは何か」、「買い手は誰か」、「欲している物は何か」という発想が大事なのだという。

そして企業は社会的責任と利益の両方を追求できる。そのために必要なら社会システムを変えていくことで、企業がどう責任を果たしていくかが問われているというのだ(石黒ネットイヤーグループ社長兼CEO)。

先の「官民対話」で政府は新産業育成方針を打ち出し、次は経済界が回答を出す番のようだ。また「需要堀り越しには規制緩和が必要」とオーム返しになるのか。

6日の読売国際経済懇話会でも安倍総理が政府の政策を打ち出した。

働く母親が増えて待機児童ゼロ政策も難しくなって来たが、働く母親が増えてきたことは家計が伸びず生活のために共働きをする家庭が増えていることだ。企業は儲けを賃上げに回し、4割を超えている非正規従業員を正社員化し給料、身分の保障をすべきではないか。

幼児教育無償化だって年間7400億円の財源が見当たらず目処が立っていない。先の経済財政諮問会議の議事録要旨を見ていると子育て支援が議題になっていた。財源をアベノミクスの成果に求めていたようだが、麻生財務相は「アベノミクスの成果は既に中長期計画で配分済みで余裕はない。他の財源を求めるべきだ」と発言していた。それに対して経団連の会長は「企業に負担を強いてはいけない」と言う意味の反対論を打っていた。

更に、法人実効税率を20%台に落とす計画で進めているが、今の31.33%を早めに30%を切るようにしたいという。海外の企業が日本に進出しやすいようにし雇用の拡大を狙っているようだ。

でも、需要があれば日本企業だって投資し、雇用の拡大にも波及するのではないか。確かアップル社が横浜に研究所を作ることが例に挙げられたが、アップル社の製品には日本企業の技術で作った部品が多数使用されている。日本に研究所を設立する理由はあるのだろう。それなりに雇用も増えるだろう。

一方で、読売新聞(2015.11.7)によると、トヨタは自動運転の頭脳となる人工知能開発の拠点を米・シリコーンバレーに移し5年間に1210億円を投資するという。日本を代表する世界的企業のトヨタまでこの調子では思いやられるのではないか。

マーケテイングの考え方を上手く使えがより多くの人に「より良い生活」を提供できると言うが、日本企業だって生き残りをかけて考えているのではないか。多くの場合、営業活動などを通じてのマーケテイングになるので今の事業の延長線上での事業と言うことになるので新規事業も限られてくる。

しかし、大事なことはその点なのだ。過去に新規事業が話題になり一部上場企業も今までにない新しい事業基盤での事業に取り組んだことがあるがほとんどが失敗か、経営の足かせになっている。従来の延長線上での事業に辛抱強く取り組んだ企業が勝ち組になった。

そんな例を思い出せば、人口減の問題を抱える日本より海外でのM&;Aが手っ取り早くなる。これでは雇用も拡大しないし賃上げなど期待出来ない。


でも、どんな日本社会を構築するかは、偏に企業、経営者にかかっていることは間違いない。今のようなやり方では将来優秀な労働力を確保することはできない。しっぺ返しは必ず企業にかえってくる。

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