2015年12月1日火曜日

COP21首脳会議始まる:CO2人為説か自然変動説かで対応は大違いか

世界の地上の平均気温の推移 1961~90年の平均値を規準
今世紀に入ってCO2排出量は増えているのに気温の観測値は
伸びが鈍っている「ハイエスタ」と呼ばれる現象
毎日新聞 2014.10.3
1130日からCOP21首脳会議が始まった。相変わらず先進国vs新興国vs途上国の構図での話し合いだが、削減計画では2℃未満は不可能だし、地球温暖化にとっては今までの常識を覆す現象も出てきた。更に地球温暖化要因がCO2など温室効果ガスによる人為説か、太陽活動に起因する自然変動説に立つかでその対応は大違いだ。その要因も十分に検証されないまま政治マタ―になったために先進国と途上国の資金の分捕り合戦になっており最大排出国の中国やインドが途上国の立場をとっている。

合意がもたつくことが、かえって無駄なカネを使うことを回避できるチャンスになるかもしれない。

今回の会議は2020年以降の新しい枠組みを作る重要な会議で、気温の上昇を2℃未満に抑えること、全ての国が削減目標を示し、5年ごとに見直すこと、被害の軽減など途上国へは資金援助することなどが合意できるかどうかにかかっている。フランスのオランド大統領は開催国議長として意欲を見せる。

安倍総理は他国にさきがけ2020年までに年1.3兆円の資金支援をすることを表明したが、途上国が排出量削減、経済成長などを実行するとなると資金や技術で2030年までに日本円に換算126兆円という巨額の投資が必要になる。

しかし、何と言ってもCO2排出量割合の大きい中国(26%)、米国(16%)が主役だ。今回の会議でも主導権を握ろうとする。

でも中国は最大排出国であるにもかかわらず途上国としての位置づけで先進国とは差異がある責任を持つという。温家宝さんが以前、国際会議で中国は発展途上の大国論を主張していたが、その考えはCOP21にも貫かれ先進国ではないのだ。

それはおかしいのではないかと中国、インドを新興国にして応分の責任(排出量削減、途上国支援)を取らそうとするがウンと言わない。でも中国は途上国支援を打ち出している。

また、米国のオバマ大統領も大変な立場だ。「どの国も気候変動の影響から逃れられない」と「レガシー」づくりを目指し、2025年までに2005年比26~28%削減を掲げたが26州がCO2規制を違法として提訴したし、来年の大統領選では共和党のトランプ氏が「気候変動は起きていない」と主張している。

政治の面ではゴタゴタし合意も難しいようだが、地球温暖化にもマイナス要因をメデイアで報道している。

今まで積み上げられた削減策でも気温の上昇は抑えられないと言う。COP事務局は10月1日までに提出された削減目標が達成されたとしても今世紀末には平均気温が2.7℃上昇するという。一層の削減を促しているのだろう。

NGO「クライメート・アクション・トラッカー」も気温上昇を2℃未満にとどめることは不可能(2015.9.2)というし、「クライメート・セントラル」も今世紀末には海面上昇が8.9mになり6億2700万人が水没するが、2℃未満に抑えると2億8000万人に減る。日本でも3400万人の土地が水没すると言う。我が国もリスクの大きい国なのだ。

国連環境計画(UNEP)によると2℃未満に抑えるには現在の取り組みに加え、2030年までに120億トンの削減が必要になると積極的な対応を迫っている。

マサチューセッツ工科大も削減目標通りに達成した場合、18世紀の産業革命前に比べ3.5℃上昇、何もしなかった場合4.5℃上昇で、1℃しか変わらないという(読売新聞2015.9.30)。

なかなか対策が進まない状況下でもCO2濃度と気温は上昇している。

世界気象機関(WMO)が、2014年の世界のCO2平均濃度を397.7ppmで昨年に比べて1.9ppm増加したというし、米海洋大気局はマウナロア観測所のCO2平均濃度が400ppmを超えたと発表した。

一方、地球の平均気温はWMO発表(2015.2.3)で14.57℃、海洋に蓄えられる熱が増大しているという。

ところが、不思議なことにCO2排出量が増えているのに今世紀に入って平均気温が横ばいの状況になっている。 

毎日新聞(2014.10.3)によると、IPCC第5次評価報告書では、地上の平均気温は1880~2012年に0.85℃上昇したが10年単位で見ると今世紀に入ってから10年当たり0.03℃上昇で横ばいという。

これを「ハイエスタ」と言って深海で海水温が上昇していると言う。各研究機関がその研究に精を出しているようだが10年後にはまた元に戻り気温は上昇するらしい。でも大した気温上昇ではないと言う人もいる。NHKも特集番組を組んで「ハイエスタ」を開設していた。

この要因は、自然変動、太陽活動に由来する日射量の減少だと気候学者は指摘する。

IPCCの第4次評価報告では我が国のスーパーコンピューター「地球シミュレーター」の解析結果が人為説に大きく傾く結果になったが、このハイエスタ現象がどうしてシミュレーションで確認できなかったのか。そこにモデルとしての不完全性があるのではないかと疑う。

地球温暖化の常識を覆す研究も出てきた。NASAが南極の氷が減少し海面上昇しているのではなく、実は南極の氷は増加しているのだと言う。だから海面上昇の要因はほかにあると言うのだ。ただ増加率は減少しているが増加していることに間違いはないようだ。

そこでまた、注目されるのが自然変動説だ。天体物理学、地球物理学、気候学などの研究者が主張し、今後太陽活動が弱まり地球は寒冷化すると言うのだ。20年近く温暖化は進んでいないと言い切る(地球はもう温暖化していない 深井有 平凡社新書 2015.10)。

水蒸気と雲の関係はモデルのなかでも重要なパラメーターであるが、よく分かっていないのだ。気温の測定にも疑問を投げかける。

自然変動説では、宇宙線が低層雲量を増加させ、それが太陽光を反射し地表の気温が低下し、CO2による温暖化をかなり打ち消すという。今後100年は気温が横ばいか若干低下、IPCCが言うように大きな温暖化は起こらないという(同上)。

この説に対してCO2人為説に立つと太陽活動の11年周期での流入熱量の変動は0.1%で気温変動は0.2℃で変動も極めて小さいと反論する。

自然変動説に立つアラスカ大の赤祖父先生は、地球温暖化の要因にCO2を否定しないが自然変動5/6、CO2が1/6と主張している。近いうちにどちらが正しいかすぐ分かるとも言っていた。

地球温暖化の要因をCO2など温暖化ガスと見る人為説に立つと先進国vs途上国の駆け引きも激しくなるが、自然変動説に立つとしかたがないという諦めになり、被害軽減のための支援が中心になる。

無駄なカネの投資を避けるためには会議が合意に達しないのがよいのかもしれない。


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