2015年12月18日金曜日

米、金融政策正常化へ利上げ:日銀はアベノミクスの第1の矢で政治的足かせか

米・FRBは金融政策正常化に向け非伝統的金融緩和政策を止め利上げに踏み切った。一方日銀はアベノミクスの第1の矢が政治的足かせとなり独自の出口戦略は立てられず、やり方によってはアベノミクスの否定で安倍政権がぶっ飛ぶことにもなりかねないのだ。

FRBと日銀の国債などの保有残高を見るとFRBの保有高550兆円(円換算)、対GDP比(2015年)25.5%に較べ日銀は保有高315兆円、対GDP比63.8%と言う異常な割合、日銀の国債保有は30.3%になり海外では財政ファイナンスではないかと疑われているが実際にもそうなのだ。

しかし量的金融緩和、出口戦略では日本が先輩に当たる。

出口戦略では失敗したが、速水総裁の時、政府が景気後退の恐れがあり中止を要望したが日銀は利上げに踏み切り、案の定、景気後退を招き元に戻した前例がある。日銀は当時の経済状況から金融政策は金利の上げ下げによる伝統的な政策に戻すことを急いだようだ。結果は失敗し批判を浴びた。でも金融政策は日銀の仕事、政府が口出しする分野ではない。

最近も、この事例を挙げて日銀が量的緩和を止め利上げをするのを政府が牽制したことがある。

その後、欧米がデフレに陥る(?)危険があった時、当時の白川総裁が「日本の金融政策を参考にせよ」と世界に訴えたとき、FRBは「日本の言うことに従う筋合いではない」と言う意味の反論をしていたと思うが、リーマンショック後に急速に市場にカネを流す量的緩和に踏み切った(日銀はその時徐々に増やしていた)。

ゼロ金利、量的緩和は経済学では非伝統的金融政策だったが、米国内の雇用、経済成長の好転が見込まれることからFRBの前議長が敷いた利上げの線上をイエレン議長が利上げを決断したことになる。

安倍総理も日銀総裁を更迭してまで異次元の金融緩和を実施したが脱デフレは見られず逆にデフレに戻る危険も見られるし、2%の物価安定目標の達成時期も2016年後半に先送りされた。消費者物価指数の動向を見ながら指標が後退するときは「躊躇せず追加緩和」を匂わす。疑心暗鬼の市場も黒田総裁の言及で期待感をにじませる。

FRBの利上げのタイミングが議論されている中で、国会の予算委員会で野党議員に「出口戦略は?」と問われ安倍総理は「専門家に任せている」と直接の言及を避けたことがある。当然と言えば当然、無責任と言えば無責任だった。

安倍総理はリフレ派の意見を採用し「第一の矢」を放ったが的を離れそうになったのだから軌道修正する必要があったが何ら言及していないのは無責任になる。

更に、アベノミクスで新3本の矢も放ったが、経済の好循環には及ばず、経済界に設備投資、賃上げを要求、黒田総裁もかねがね賃上げの必要性を訴えていた。政府、日銀が二人三脚で同じ訴えをしているのだ。

以前は頻繁に会談していた二人だが最近は遠のいている。安倍総理と黒田総裁が会談したとなるとメデイアは騒ぎ「どんな話をしたんだ」と詰問するが、黒田総裁の顔は冴えない。政府と日銀では考え方が違うようだ。

物価上昇を目指し、追加緩和も辞さない日銀だが、政策決定会合では一人の委員が2%物価達成時期を中期目標にするよう提案しているがいつも1vs8で否決されている。朝日新聞(2015.12.9)の「危機後の中央銀行」の記事でG30評議会議長のジェイコブ・フランケルさんのインタビュー記事が載っていたが、「2%インフレ目標は短期的に達成するものではなく、中期的な目標と捉えるべきだ」と言う。

日銀の黒田総裁も金融政策の運営に苦しんでいるのではないか。米国とは反対に政治課題とコミットしているために独自色を出そうとするとアベノミクスを否定することにもなりかねず、安倍政権がぶっ飛ぶ危険もはらんでいるのだ。

それでいて、失敗すると日銀のせいにされてしまう。「2年で達成しなければ辞任する」と豪語した岩田副総裁が責任を取るか。

日銀が国債の30%を保有することは財政ファイナンスと疑われるし、2020年にPB黒字化が出来なければ市場の信用を失ってしまう。国債は下落、長期金利は上昇、勿論内部留保も300兆円を越えるし、借金してまで設備投資する必要が今のところ無いとは言っても日銀を始め金融機関の経営は危うくなる。

金融政策、金融システムの信用を失うのだ。日本経済の混乱は目に見えている。いつも経済危機は銀行経営が危なくなるときだ。

出口戦略は米国と同時にやった方が良いと思うのだが。出口戦略、量的緩和の先輩格である日本が後れを取ったことになる。


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