2018年2月4日日曜日

金融政策、リフレ派vs反リフレ派:私たちの生活を守るのはどちらか

金融政策でリフレ派vs反リフレ派の攻防が激しくなりそうだ。日銀の役目は物価の安定、どっちが私たちの生活を守ることが出来るのか。そして政府は今後の金融政策でどう舵取りするのか。その判断になるのが黒田総裁、岩田副総裁の任期切れに伴う後任選びだ。

FRBは緩和縮小し利上げのタイミングを狙っているが雇用増加に変動があり先送りが続いている。欧州中央銀行も縮小し出口戦略を検討しているらしい。そんな中で日銀だけは「2%物価目標」達成まで異次元の金融政策を継続するという。これが続けば周回遅れの感もする。

日本は長期のデフレから脱出出来ず円高、株安で苦しんでいる。以前は為替高はその国の経済の強みと教えられたが、今は輸出にも影響し海外市場頼みの経済では円高は好ましくないのだ。アメリカも財務長官が「弱いドル]発言をするとすかさずトランプ大統領は「強いドル」発言をして市場を混乱させた。

何を考えているのか。閣内不一致をさらけ出されては困ったものだ。

民主党から自民党が政権を取り返すとき、安倍さんは総裁から総理になるが、困難を極めていた日本経済の立て直しにリフレ派金融政策を採用することに決めた。当時の衆院選でも「市場にカネを流せば物価は上がる。円高から円安になる。こんな事が分からないのか」と自民党議員は新人まで民主党政権を批判していた。

民主党政権でも当時緩慢な量的緩和を続ける白川総裁に圧力をかけていたが安倍総理になってからの圧力は強く、白川総裁は任期を半年残して辞任した。政策委員にもリフレ派が登用され白川さんは外堀を埋められたのだ。

後任はリフレ派が検討され、日銀総裁の座が欲しい財務省は武藤・元財務事務次官を推薦したが、「武藤もリフレ政策の必要性を訴えている」と総理に進言した。当時、財務省はリフレ派ではなかった。

黒田総裁が任用され「2年で2%物価目標」を掲げて日銀は異次元の量的緩和政策に走った。リフレ提唱者である学習院大の岩田さんも副総裁に就任、「2年で2%が達成出来なければ即辞任する」と啖呵を切った。
更に運の良いことに世界経済の動きから日本も円安、株高に動きアベノミクスとタイミングが合って安倍総理、日銀は市場から評価された。

リフレ派の主張は、国債などを購入し市場に供給する通貨の量を大幅に増やしたり物価上昇目標を明確に設定するなどして人々の「期待」に働きかけ、デフレからインフレに「転換できる」と言えば、反リフレ派は日本経済の景気回復は、世界経済の回復が主因で、失業率の低下も急速な労働人口の減少に寄るところが大きいと言う(The AsahiSimbun GLOBE Feb.2018 No202)。

京大名誉教授の伊東光晴先生もリフレ派金融政策を実証に欠ける理論と切って捨てていた。正統派経済学者にとっては異論がある。

市場や専門家の見方はどうなのか。

市場は、日銀が量的緩和策を継続する事により株価、為替に大きな変化がないことを期待する。

でも国債の残高450兆円を日銀が占めるために国債市場に早い内に支障が生じるとみている。安倍政権の赤字財政を日銀がカバーしている事で財政ファイナンスが疑われ、顕在化すると国債の信認が下落し日本経済にとってはまずい結果になる。そして2%のインフレ目標はコントロールのつかないハイパーインフレを来しかねない危険もあるが専門家の間でも意見が違っている。

また、量的・質的金融緩和策の1つである長期金利をゼロ近くに維持すれば企業は設備投資などの資金繰りが楽になることが期待されているが、低金利と言っても設備投資が増えるわけではない。問題は需要があるかどうかだ。今は供給過剰の経済では設備投資は期待出来ない。「儲かる仕事があれば借金仕手でも設備投資する」と中小企業の経営者は言っていた。

2%物価安定で国民生活を守らなければならない日銀、財政健全化が政府の課題という共同文書が作成されているが、2%物価目標は遠く、PB黒字化も2027年まで先送りされいずれも歯車が合っていない。

政治の圧力に屈した日銀、一方専門家に見放されそうなリフレ派では混沌とした日本経済しか頭に浮かばない。2020年のオリンピック後のバブル崩壊での不況、国債の信用下落でも日本経済は大混乱だ。
脱デフレ宣言のしたい安倍政権だろうが期待は非常に低い。

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2017.12.2掲載

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